内容説明
狂乱のバブル経済崩壊後の「失われた20年」のさなか、日本中の不良債権取り立てに奮闘する国策会社=整理回収機構。そこで働く面々は、その多くがバブル崩壊で破綻した金融機関の出身者たちだった。借り手の側から取り立てる側へ――将棋の「奪り駒」のように回収の最前線に打ち込まれた者たちは、バブル経済に踊った怪商、借金王、ヤクザらと対峙し、でジワジワと追い詰めていく。泥沼の債権回収に奮闘した、男たちの物語。
住専こと、住宅金融専門会社7社は、バブル崩壊により、6兆4000億円にのぼる巨額の損失を負った。
7社はいずれも大手銀行、証券、生保などを母体に設立されたが、80年代末の狂乱のバブル時代、母体行が融資に尻込みした「バブル紳士」たちに巨額の融資を行い、その多くが回収不能となり焦げ付いた。
政府は6850億円の公的資金投入を決めるが、これが世論の強烈な反発を招く。
自民党・橋本龍太郎政権は「住宅金融債権管理機構」を設立し、社長に「平成の鬼平」と呼ばれた中坊公平元日弁連会長を据えた。住専各社から譲渡された不良債権を、できる限り回収することを目指す、「バブルのしんがり」たちの活動は、こうしてスタートした――。
文庫版のための追補
「トッカイ」とは何だったのか――大蔵省元銀行局長の証言
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
84
債権回収で知られるRCC。その誕生と歴史。バブル期に拡大した不動産会社への融資。杜撰な与信をした住専各社は破綻。破綻処理に多額の税金が使われる。その不良債権回収にRCCの前身である住管機構が設立される。読んで驚くのは杜撰な融資と、悪徳な不動産業者、苦闘する回収の現場か。カネは貸すより回収が難しい。よく言われることだが、相手が反社だったり悪徳業者であれば尚更だ。特に債務者の末野や西山の悪謀は驚異的。回収する側との攻防が読ませる。RCCで働く人々の人生も流転で印象深い。実に読み応えあるノンフィクション。2022/07/30
速読おやじ
34
住専、住管機構、整理回収機構、直接自分では関わっていないが、元銀行員として色々思うことはある。大阪支店にいたので末野興産の伝説はよく聞いていた。当時不動産部にいたので、上層部は当然に末野と付き合いがあったのではないか。住管機構の精鋭部隊による悪徳債務者からの回収、その闘いはまさにドラマだ。相当厳しい局面もあったろう。実際に中坊さんの横で仕事をした人から、少しだけ話を聞いたことがあるが、かなり激しい人だったようだ。まさに命を削って仕事をしていたと。こういう闘いには名も無き担当者達の奮闘が心に残る。2022/03/27
おいしゃん
28
身体を張って不良債権を回収してまわる男たちのノンフィクション。誰もがやりたがらない、心身共にハードな業務を、彼らはどんな心持ちで担っていたのか…清武さんらしい人物に寄り添った取材が実を結んでいる。2022/03/30
なよ
15
住専から金融機関が破綻した時期までは新聞でよく目にしたが、それ以降も記載されていて、読みにくいところもありましたが、勉強になった。一貫して長期間を記されていると、融資のスタンスや、社会・法律の改定は、こういうところから起因したものだな、と思ってしまう。2021/04/24
Satoshi
13
バブル崩壊後に問題となった住専による不良債権の税金補てん。それでも、国民負担を少しでも減らすために債権回収をした寄せ集め集団があった。ヤクザまがいの借金王の資産をおさえていく物語はドキュメンタリーとは思えない臨場感だ。それぞれの立場がありながら、使命を全うする姿はバブル精算の群像劇である。想像以上に面白かった。2022/02/01