内容説明
学費のため風俗に走る女子大生、貧困地域で蔓延する主婦の売春、低賃金で部品のように働かされる介護現場。
――「貧困」は社会のいちばん弱い部分を直撃する。
バブル崩壊から日本社会は転げ落ちはじめた。
終身雇用、労働組合のあり方、すべてが時代遅れとされ、ネオリベ(新自由主義)と自己責任論が社会を席捲した。
そこで犠牲になったのは、主に女性たちと若者。
そして、いま中年男性が狙われている。
国が決めたマクロな政策はときに末端の人々を壮絶な現実に陥れる。
――衰退途上国で、次に堕ちるのは、中年の男たちだ。
衰退途上国・日本の現状を徹底討論したノンフィクションライターと政治学者による平成30年史。そして未来は?
【目次】
プロローグ 新自由主義とは
1 コロナ禍が浮き彫りにした見たくなかった現実
2 コロナがなければ、中年男性が死ぬはずだった
3 どうして団塊の世代だけが恵まれるのか
4 分断をこえて、ポストコロナを生きる
あとがき
・なによりも死にたくないという覚悟を――中村淳彦
・政治の行き詰まりと私たちのこれから――藤井達夫
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまご
23
これが本当なら,これに勝るホラーはない.対策のためにも,知らなければいけない現実. 小さな政府を求めた結果,昭和型セイフティーネットの縮小で,今の公助は規模も小さく時代にマッチしないシステム.お金がなくたって幸せ,なんてポエムは高額所得者の言葉であって,貧困層は,幸せをつかむための初期投資資金すらないのに,作れない自分が悪いという自己責任となるネオリベ的世の中.非正規雇用の女性,学生がすでに貧困で,そして今後中年男性がそうなると予想されている. 私の目に映る現実と違いすぎる.分断の恐ろしさなのか.2021/03/09
イトノコ
20
図書館本。ライターの中村氏と、政治学者の藤井氏がネオリベ=新自由主義の功罪とポストコロナの日本について対談。/ネオリベは、福祉国家の個人への過剰な介入を嫌い、個人の自立と競争を促進するもの。そこで個人はセルフブランディングや能力向上、経営者視点などが求められる。もちろんそれは個人の選択肢を増やしたり市場を活性化したりと思想としては良いのだろう。が、問題は競争の激化による企業(時に社会的インフラまでも)のブラック化、そして競争から溢れた人間の切り捨てだ。続く2023/03/03
スリカータ
15
本書でネオリベという言葉を初めて知った。のべ3,000人を超す傾聴を重ねた中村さんの経験と政治学者である藤井さんが、お互いを補完し合い話を進め、深めて行く。池袋の立ちんぼの需要と供給、不思議な明るさとコミュニティの話題が印象に残った。悲観せず福祉に頼らず、強かに明るく貧困を生き抜く強かさが、彼女らにはある。2023/11/24
訪問者
8
中村淳彦と藤井達夫の対談だが、ネオリベにより日本社会が分断化、貧困化していく中で、ネオリベを全否定するのではなく、ある程度ネオリベ的に生き、なおかつネオリベ的な成功ではない多様な生き方を模索するほかないのではないかという危うい状況を描き出している。しかし中村氏が高齢者介護を無駄な時間と言い切っているのには驚いた。子育てについても親の側にとっては得ることは少ないと言っている。ここまで言っている人は中々少ない。2022/03/08
あつ子🐈⬛
8
言いたいことはよく分かったつもり。 ただ対談の中で政治家を呼び捨てにしているのが少し気になりました。安倍とか、吉村とか、小泉とか。 思想が異なったり嫌いな人間がいるのは当たり前のこと。でも反権力と、最低限の敬意も払えないのは違うと思う。「人はどうしたら自分はたいしたことはないと気づくのか。とくにエリートは(自分は違う)」みたいなこと書いてるのに全然謙虚じゃないような…。 私は出羽守ではないけれど、政敵にもMr.(President)とかSirとかつけて、徹底的に議論するのは外国の羨むべきところかと思う。2021/06/22