内容説明
「かわいそう」と「おいしそう」の境界線はどこにあるのか?
山に入るたび、死と再生のダイナミズムに言葉を失いつつも、殺された獣を丹念に料理して、一家で食べてきた日々――。
獣を殺す/料理する/食べる。
そこに生まれる問いの、なんと強靭にして、しなやかであることよ。
いのちをめぐる思索の書。
母として、写真家をして、冒険者として。
死、出産、肉と皮革を、穢れから解き放つために。――赤坂憲雄氏、推薦!
【目次】
はじめに
序章 獣の解体と共食
第1章 おじさんと罠猟
第2章 野生肉を料理する
第3章 謎のケモノ使い
第4章 皮と革をめぐる旅
おわりに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
68
食べるとは、どういうことなのか?何を食べるのか?それは、どういうもので、どういう存在であるのか?を、考える。生命として抗うものとしての獣と、それを狩る猟。そこにあるものを感じ取れるのか。それぞれの存在を、関係を考える。美味しく食べてやるという言葉に、たくさんのことがこめられている。ありがたいとは、どういうことか。ページをめくる手が止まらない本は、そうそうない。2023/11/30
さすらいの雑魚
47
最近界隈で流行りな狩猟ノンフィクションの逸品です。写真家の著書なので本人撮影の生々しくも精気溢れる獣と肉とその間の写真が挿絵がわりに使われてます。さすがはプロの作品だと雑魚は感心しきりなのです♪ 写真家は狩猟を追い獣肉を喰らう日々のなかで浄めと穢れの交錯する狩猟曼荼羅を彷徨い己の業と向き合う。 山界に惹かれながら平地に留まる魂の揺れが見てとれる秀逸なノンフィクションに仕上がってます。2021/09/01
あかぽち
17
狩友さんに教えてもらった本。作者さんはカメラの人でみずから狩猟はしないけど、近所のおじさんから獣肉をもらった事から狩猟の世界に引き込まれていく。フェアな見方をする方だな、と感じた。皮革の白なめしの旅は特に面白かった。あれも食べられるのかー!2023/01/10
ようはん
16
屠畜や鹿や猪の狩猟を題材とした本はいくつか読んだが、仮に自分が狩った獲物を殺して体を剥ぐとなると抵抗感は相当あるなと感じさせる本。著者は写真家で知り合いとなった猟師から獣肉を貰い、狩りに同行してのルポであるがスーパーで売られている肉の印象が変化したというのが印象深い。2021/02/15
はんぺん@ヒト×コト読書会
14
直感に支えられた大胆な行動力と、体験に基づいたていねいな思索。繁延さんの著作が発する魅力の一つはこのバランスにあるのだと思う。覆い隠された生きる営みに目を向けることは、生き物であり一市民である「私」を有機的なつながりの中に位置付け直すことなのだと感じた。2024/01/21