内容説明
美しい姉妹と青年との避暑地の恋の結末は? ――昭和23年、高志は、東舞子の浜に建つ伯母の別荘で、ひと夏を過すことになった。久しぶりの再訪、そして、隣家の美人姉妹との戦争をはさんでの再会。互いに成人した彼らの間に、微妙な感情が芽生える。そんな折に、妹の津枝子が水死した。ひそかに恋人ときめていた津枝子の死に、悄然となりながらも、高去は、死因に疑いを抱く。美しい海に青春の痛みをからめた、本格長編ミステリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kagetrasama-aoi(葵・橘)
44
乱歩賞受賞の「透明な季節」の続編と言うべき作品。主人公の芦川高志は十九歳になっています。終戦三年後の昭和二十三年の知多半島のとある海辺の町が舞台、八年前の高志の回想を挟んで物語が進みます。華族の血をひく美人姉妹との再開、その妹の溺死、飛び込み台、夏休みの終わり…と青春小説の要素が煌々と輝いています。高志の回想の中に張り巡らされた伏線、そして回収も美しいです。梶さんの精緻な文章が心に残ります。この表紙絵も良いですね!復刊して欲しい一冊です。2022/05/27
センラ
12
デビュー作『透明な季節』の続編ですが、前作を読んでいなくても差し支えありません。終戦直後、アメリカ文化の流入が目まぐるしい日本が舞台。ヒロインの死に始まり、いくつもの回想シーンが強烈なノスタルジーを誘いつつ、物語は進みます。「きらめく海で津枝子は死んだ」。まず青春小説としての繊細さに感嘆し、続いて推理小説としての完成度に唸りました。相変わらず伏線の回収が美しい。切なさと爽やかさを併せ持つ読後感もまた、作者の持ち味だと感じます。2016/05/17
Nanami
11
江戸川乱歩賞受賞後の第一作。「きらめく海で津枝子は死んだ」からはじまる。前半は回想シーンをはさみつつの展開。叔母の別荘でひと夏を過ごすことになった主人公。そこで隣家の美人姉妹と再会。ひそかにときめいていた妹の津枝子が水死。主人公は死因に疑いをいだいて――。というストーリーです。情景は、終戦後ということで少しなじめない単語などもあったりするけれど、青春プラスミステリとしてはとても綺麗でした。伏線の張り方もすてき。初読みでしたが、絶版本が多いのですねー。うーん。2014/04/05
koo
10
再読。何故復刊でスルーされたのか今でも不思議です。「透明な季節」の続編で主人公高志視点で描かれるストーリー。好意を寄せる幼馴染津枝子の溺死から中盤までは彼女への想いを回想する青春小説スタイルですが女性視点による変なセリフもなくしみじみと読ませます。そして終盤に張り巡らされていた伏線の数々が一気に回収され真相に至るカジタツ節はその後の「龍神池」「リア王」を彷彿とさせます。復刊を機にカジタツを知った方にオススメできる作品ですね。電子書籍化されている様です。2024/05/12
ソルト佐藤
7
『透明な季節』の続編。戦後まもなくの風俗描写が面白い。ただ、この話も最初の死体だけで話を回すのかー。青春小説なところは面白いけれど、ちょっとだるいなあ。と、思っていたら、最終章でのどとのう伏線回収ですよ(笑 友人のちょっとした犯罪のところもケリをつけていて笑った(笑 そこも、伏線だったのかと、いつものカジタツで楽しい。読み終わった後で表紙をみると、またちょっと感慨深い。2022/02/13