内容説明
かつて『大鴉の啼く冬』の事件で重要な役割をはたしたマグナス老人が病死した。ペレス警部たちが参列したささやかな葬儀の最中、墓地や近くの農場が巻きこまれる大きな地滑りが発生。被害状況を確認すると、土砂が直撃した空き家から身元不明の女性の遺体が見つかる。ところが検死の結果、女性は地滑りの起きる前に死んでおり、しかもその死は他殺と判明。ペレス警部は被害者の身元割り出しを急ぐが、思わぬ事実が明らかに……。シェトランド諸島を舞台に英国現代本格ミステリの進化と深化を実証しつづける名シリーズの、新たなマイルストーン。/解説=吉野 仁
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
265
つまらなくはないけれども、新シリーズになってからマンネリしている感は否めない。シリーズ物として、ペレスのプライベート面で色々とフックをてんこ盛りにしているのに、特に目新しい展開を持たせる訳でもなく、キャシーやダンカンの存在に必要性がなくなっている。一作目のマグナスをここで再登板したのも、ただの読者サービス。今作で急にウィローが女の顔になったのは面白かったけれども、少し展開が短絡的。なにより、終盤まで主人公チームにも犯人が分かっていないまま、犯行現場を抑えて解決というオチがずっと続いているのが戴けない。2023/01/25
ケイ
110
サンディの成長が嬉しい。さて、続けて何作もシリーズを読むと、パターンが分かってくる虚しさを感じている。犯人だけ色がついて浮き出ているように思えた。そして、作者への小言が出てくる。いきなり赤ちゃんを欲しくなる気分とはなんなのか、ヒッピーは強いお酒は飲むのか、などとたびたび突っ込む。邪推だが、作者はウィローのようなタイプじゃないのかな。少なくとも、作者が批判したいタイプの女性はわかる気がする。そして、ペレスはどうもフランの娘を都合のいい時に人に預けているようで、保護者として不適格に思えるんだよなあ。2023/04/25
kaoru
80
シェトランド諸島を舞台にしたペレス警部シリーズ。当地で起きた大きな地滑りが女性の死体発見に繋がる。島外から来た彼女の死因は他殺。ペレスの部下サンディやインヴァネスの主任警部ウィローがその捜査に当たり、島内の人間関係が次第に明らかになるなか、恋人の遺児キャシーを気遣うペレスには微妙な心情の変化が生じる。派手ではないが正統派の英国ミステリの香りが嬉しく、登場人物の成長も感じ取れる。犯人は私にとっては意外な人物だった。本シリーズの主役はシェトランド諸島とそこに生きる人々かもしれない。最後の一作の翻訳が待たれる。2021/01/19
星落秋風五丈原
55
ペレス警部がマグナス(旧シリーズ第一作「大鴉の啼く冬」登場)の葬儀に参列している最中、大きな地滑りが発生。周辺住民の安否確認をすると、崩壊した空き家から身元不明の女性の遺体が見つかる。ところが検死の結果、女性が死んだのは地滑りの前、しかもその死は他殺によるものと判明。警部は殺人事件の被害者探しと犯人探しを同時に行う。地面から死体が登場し、誰も知らない殺人を明かしたわけで、邦題通り地面が人の犯罪を告発したことになる。2021/01/25
stobe1904
45
【シェトランド諸島シリーズ】地滑りで損壊した空き家で女性の遺体が発見されたが、死因は他殺と判明し、ジミー・ペレスがウィロウとともに事件を追う。このシリーズはミステリとして出来が良いのはもちろんだが、登場人物の心情がきめ細かく描かれているため共感性が高いことを再認識した。このシリーズも最終作を残すのみとなったが、丹念に作られた良質なミステリをじっくりと味わいたい。★★★☆☆2021/02/08