内容説明
全単著から実証研究として歴史的意義あるものをテーマごとに整理・収録。この30余年に起こった変化――人口高齢化、技術進歩、医師数と医療費、終末期医療など――は医療現場に何をもたらしたのか。それぞれの時点での将来予測の当否、現在の視点からの解題を加えて収録。80年代後半から現在までの研究分野の軌跡を描く学術的価値の高い研究書。
目次
はしがき
序 論 私の医療経済・政策学研究の軌跡
第1節 全単著とそれに含まれる主要論文の紹介
第2節 日本医療の将来予測を行うために考案した分析枠組み・概念
第I部 テーマ別の主要実証研究
第1章 脳卒中リハビリテーションと地域・在宅ケアの経済分析
第1節 医療の質を落とさない医療費削減──「脳卒中医療・リハビリテーションの施設間連携モデル」による経済効果の具体的検討
第2節 医療効率と費用効果分析──地域・在宅ケアを中心として
第3節 21世紀初頭の都道府県・大都市の「自宅死亡割合」の推移──今後の「自宅死亡割合」の変化を予想するための基礎作業
第2章 人口高齢化と医療費増加
第1節 1980年代の国民医療費増加要因の再検討
第2節 人口高齢化は医療費増加の主因か?
第3章 技術進歩と医療費増加
第1節 CTスキャナーの社会経済学
第2節 MRI(磁気共鳴装置)導入・利用の日米比較──日本でのハイテク医療技術と医療費抑制との「共存」の秘密を探る
第3節 慢性透析医療と医療費の日米比較──医療費の支払い方式と水準が「医療の質」に与える影響
第4節 國頭医師のオプジーボ亡国論を複眼的に評価する──技術進歩と国民皆保険制度は両立可能
第4章 医療提供体制の変貌──病院チェーンから複合体へ
第1節 わが国の私的病院チェーンはどこまで進んでいるか?
第2節 医療法人の病院チェーン化は1980年代後半以降どのくらい進んだか?
第3節 保健・医療・福祉複合体の全体像──全国調査の総括と評価,将来予測
補論1 介護保険下の「複合体」の多様化とネットワーク形成
補論2 医療・福祉の連携か複合か──両者の対立は無意味,真理は中間にある
第4節 保健・医療・福祉複合体とIDSの日米比較研究──「東は東,西は西」の再確認
第5節 日本の保健・医療・福祉複合体の最新動向と「地域包括ケアシステム」
第5章 医師の所得と勤務形態および医師数と医療費の関係
第1節 医師所得は高すぎるか?
第2節 病院勤務医の開業志向は本当に生じたのか?──全国・都道府県データによる検証
第3節 医師数と医療費の関係を歴史的・実証的に考える
第6章 終末期医療費
第1節 「終末期医療の在り方」の見直しにより老人医療費の抑制が可能,ではない
第2節 終末期医療費についてのトンデモ数字
第3節 後期高齢者の終末期(死亡前)医療費は高額ではない
第4節 「麻生発言」で再考──死亡前医療費は高額で医療費増加の要因か?
補 章
第1節 わが国病院の平均在院日数はなぜ長いのか?
第2節 医療満足度の国際比較調査の落とし穴
第3節 老人病院等の保険外負担の全国調査──現実の保険外負担は厚生省調査の3倍
第II部 全単著はしがき,あとがき,目次
『医療経済学──臨床医の視角から』医学書院,1985
『脳卒中の早期リハビリテーション』医学書院,1987(上田敏氏と共著,あとがきのみ)
『リハビリテーション医療の社会経済学』勁草書房,1988
『90年代の医療─「医療冬の時代」論を越えて』勁草書房,1990
『現代日本医療の実証分析─続 医療経済学』医学書院,1990
『複眼でみる90年代の医療』勁草書房,1991
ほか