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内容説明
ナチス・ドイツ国防軍の脱走兵は、捕らえられて死刑判決を受けた者だけでも3万人以上と、英米に比べて際だって多い。その多くは戦闘中の逃亡ではない。民族殲滅に加担したくないという、生命をかけた抵抗であった。戦後、生き延びた脱走兵たちは久しく卑怯者と罵られ、存在までも否定されつづけるが、ついに軍法会議の不当な実態を暴き、名誉回復をなし遂げる。最後の脱走兵の生涯を通じて、人間の勇気と尊厳を見つめる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ベイス
102
たとえそれが犯罪国家ナチへの抵抗であろうとも、戦場からの「脱走」という行為に付きまとうネガティブイメージの払拭と名誉回復がいかに過酷か。しかもドイツは戦争責任をクリーンに清算した模範生のような印象があったが、旧軍人や法曹界、保守系政治家らによる執拗な妨害は驚くばかりだ。その多くが戦中ナチに忠誠を果たした者たちというのだから日本の戦後も真っ青である。「逃げる」という行為の尊さは息苦しい今の社会にあってもっと強調されていい。学術書としてはかなりぬるいが、脱走兵バウマンの生きた証を残した意義は大きいと感じる。2023/11/06
佐島楓
86
非常にショッキングな内容。ドイツは戦後処理が成功していたと思っていたのだけれど、決してそんなことはなく、引きずりくすぶり続けた悪感情や悪政があったのだなと驚いた。殺戮を拒否して脱走する兵士の、その「脱走」という行為にのみ責めを負わせる戦争の恐ろしさ、愚かしさを改めて感じた。また、この問題はドイツだけではなく、人間だったら誰でも一度はしっかり考えなければいけないのではないだろうか。自分の中で非常時にモラルが転倒してしまわないためにはどうすればよいのか、と。2020/10/23
Panzer Leader
71
WWⅡ後、ドイツ国防軍の「清潔・潔白神話」が崩壊したことはよく知られている事実であった。しかし本書は戦後ずっと社会的に抑圧されてきたナチス軍司法によって犯罪者として裁かれた人々(特に脱走兵)の名誉回復への茨の道を綴ったドキュメント・ヒストリー。脱走は「受け身の抵抗」であり、彼らは犯罪者でなくナチス軍司法の犠牲者であったと政治的・社会的に完全に認識されたのは驚く事に2009年のことであった。その活動の中心人物であった「最後の生存脱走兵」バウマンの言葉が心に響く「私は決して英雄ではない。だが臆病者ではない。」2021/05/15
樋口佳之
49
いつもこう問うべきだ。〝私はこの命令に市民生活においても従うことができるだろうか〟と。決して自分の良心に反する行動をすべきではないのだ」/そうなのだけど、自分の国の市民生活の有り様や良心の拠り所を考えてしまうとなあ。/(『ドイツ福音主義教会機関紙』一九九六年一二号所収)この「宣言文」は連邦議会に送付された。衝撃は大きく、最高裁判決の比ではなかった。連邦議会の姿勢も変わらざるをえなくなった。/教会の影響力強いなあ。2021/02/01
つちのこ
40
ナチスが行った不条理の蛮行に、脱走兵に対しての断罪がある。裏切者と罵られ、軍法会議にかけられた多くの兵士が死刑判決を受けている。その数3万人。本書では脱走兵の最後の生き証人といわれた一兵卒バウマン氏の生涯を追いながら、ナチスが行った不当な実態を暴き、名誉回復をかけた闘いを綴っている。脱走者の多くが反ナチの人々であったが、戦後も差別は続き、年金も受けられないという辛酸を舐めている。犯罪者ではなく、ナチス軍司法の犠牲者と位置付け、復権活動が認められたのは氏らの努力である。それを知ることができた力作に感謝。 2022/03/24
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