内容説明
没後120年。スキャンダルを経てなおキザを貫いた世紀末の鬼才、その大きすぎた代償とは――。
近年刊行された『オスカー・ワイルド全書簡』をもとに、ワイルドが投獄されるきっかけとなった事件の発端から、同性愛裁判、獄中の真実、そして出獄後の放浪、死までを、訳者の詳細な解説と註とともに、一篇の小説のように再構成する。
恋人との愛憎・確執、事件の顛末などが明らかになることにより、独自の芸術論、迫真のキリスト論と人間的な弱さが一体となった「悲哀の道化師」ワイルドのほんとうの姿が浮かび上がる。
目次より
前説――ワイルドの前半生と
事件に至るまでのあらまし
第一章 三度の裁判
第二章 深き淵より
第三章 新たな牢獄
終章 ワイルドの亡霊
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
44
大英図書館で『獄中記』の生原稿を見たことがある。薄青色の刑務所用箋に書かれた文字が、栄光の頂点から悲嘆のどん底に突き落とされた作家の血涙に思えた。学生時代に愛読した本が入獄前と後に書かれた手紙も加えて、書簡集という名の晩年を描く自伝としてよみがえった。そこにいるのは浪費家で甘ったれで妻子がありながら同性愛に耽る、生活無能力者の天才芸術家の肖像なのだ。ワイルドは意識せずに虚構を排しリアリズムに徹して己の心境を描く、日本的な意味での私小説を書いたといえる。個人的には他の小説や戯曲をしのぐ最高傑作だと信じたい。2020/11/20
ポテンヒット
11
何と波瀾万丈な人生よ。メインは恋人ダグラスに宛てた獄中からの長い長い手紙。彼でなくともここまで完膚なきまでに批判されたら最後まで読むのは難しいかも。でもさすがワイルド、ダグラスの話から内省、芸術とキリストにまで及ぶ文章が読ませる。何度も別れる機会があったのに結局よりを戻すワイルドに「別れへんのかーい」とツッコミを入れたくなった。出所後の手紙と解説からワイルドや友人ロスの二面性、ダグラスのその後など一方から見ただけでは理解しきれない心の複雑さと悲哀を知る。良くも悪くもワイルドの影響力は強かった。2024/01/28
ゆめの
2
やっと、すっきりしたかな。あんな手紙を書きながらワイルドはダグラスと復縁したのが理解できなかった。ワイルドとしては、あれは作品であって真意ではなかったのね。ロスのことは眼中になかったな。ロスとダグラスの確執。あの手紙を元にワイルドを手に入れたかったのね。でも一緒の墓に入ったところで愛したことは証明されても愛されることはない。しかし、ロスもダグラスも死ぬまでワイルドの亡霊に付きまとわれるとは。2025/08/14
あろあ
2
ダグラス側の言い分はよくわかんないから、なんとも言えないけど、うーんどっちもどっちなのかなあ?でも私も私の黒歴史に納得いかない別れ方で私をふったあの人に、あなたのここがよくないと思う、あのときのあれはいただけないわ、って長ーい手紙を書いてやればよかったわー!と思った!ダグラス父は2人を別れされたかったわけじゃなく、ワイルドを転落させたかったんだろっていう妄想は私もしそう。私もそう思う(笑)あとはお金にはクリーンでいたいですね。2023/01/01
かわぴょん
2
「こんな長い手紙貰ってどないするん!」って思ったら、やはり文通相手・ダグラスは序盤で破り捨てていたらしい。なのに何故残ってるんだ?という謎には「しっかり複写して、一方は君が持ち、一方を彼に送ってくれ」と親友にちゃっかり頼んじゃうワイルド。しかしスラスラと読めてしまう具合に舌を巻きました。いやあ、インフルエンザのくだりは本当に同情したけど、後半にかけて、大袈裟野郎な一面が見えてくると、悲劇のヒロインさながらのワイルドの姿が浮かび上がる。歴史は勝者のもの。確かに「こころ」は影響されてそう。2021/01/07
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