内容説明
「言い知れない切なさ」
「甘さのにじむ寂しさ」
「後悔の残るしあわせ」
「幸福なあきらめ」
一筋縄ではゆかない感情があふれ出す、忘れがたい「記憶」という名の実話怪談。
生と死の交わる繊細な世界観の装画は、YOASOBI「夜に駆ける」のMVを手掛ける藍にいな。
心に残る1話がきっと見つかる、ぜんぶ実話のエモ怖い話。
確かに幽霊の話、怪奇現象の話なのだけれども、彼・彼女の中では怖いとは別の感情で記憶されている体験。
言葉にならない何かが静かにあふれ出すメロウな実話怪談集。
・人身事故でできた待ち時間、偶然昔好きだったバンドマンに再会した彼女は想い出話に花を咲かせるが、なぜか彼の言葉の一部が聞き取れなくて…「憧れの延長線上」
・家出した時に籠る公園の土管。内壁に書かれた〈しょうぼうしになりたい〉という落書きが見るたびに変化して…「土管」
・密かに想いを寄せる文芸部の同級生。彼女には彼氏がいたが心霊スポットに行ってから異変が…「さよなら近藤」
他、心揺さぶる41の実話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
坂城 弥生
41
「祖母のこと」と「祖父のこと」が印象的だった。怖いというより、不思議という印象の話が多かったかな。2020/12/04
雨
22
怖さは控えめ。普段もっと怖いか厭な怪談ばかり読んでいるから物足りなさがあった。2021/03/12
棕櫚木庵
16
「幽霊の話,怪奇現象の話なのだけど・・・怖いとは別の感情で記憶されている体験」(ジャケット裏内容紹介)の41話.書店でたまたま見かけ,『嘘みたいな本当の話』(内田,高橋)を面白く読んだ後だったこともあり手に取ってみた.表紙絵や,こういう本に時に感じられる妙に気取ったもの言いの気配を序文に感じたりして若干危惧したけど,楽しく読みました.気楽に読めたので,入院中の読書にとっておくべきだったかななんて思ったり.「土管」,「ビブリオ」などが心に残った.2024/01/16
有機物ちゃん
10
懐かしい思い出の中の僕(私)と怪異。ノスタルジックな雰囲気。『ノーカンとする』『異臭』『蝉』『九官鳥』はなんだか邪悪な物を感じる。九官鳥そのあとどうなったんだろう?私が鳥飼なので心配になってしまった。『祖母のこと』の子供の時の自分本位で身内を雑に扱う経験は身に覚えがあって苦しい。お祖母様が強く優しい人だから許されたんだね。私も許せる人になろう。『祖父のこと』は超合理主義じじいVS死んでも妻にモラハラ続けるじじいでバトルもの。同年代の男に正論叩きつけられてぐぬぬ~ってなったんだろうなぁ2022/07/09
柊よつか
8
体験者に「怖い」以外の余韻を与えた話を、三名の書き手で綴る一冊。実話怪談集に数話混ざっている「良い話」に特化した作品集かと思いきや、不穏な話もある。思ったより振り幅が大きく、なるほど出処は怪談だものなと妙に納得した。特に印象的な話は、事故の記憶が痛々しい「あの子」、嗚咽が空白の生を埋めるかのような「連れてきた少年」、ひと夏の思い出の色合い「くちなしと海」「白いカーテン」、何らかの本物との交差「本物の功罪」、優しく強い「祖母のこと」、厳しく強い「祖父のこと」、本好きなら少なからず憧れてしまう「びぶりお」等。2021/02/27