内容説明
愛国者が売国奴を礼賛する摩訶不思議。
「ナショナリズム」という言葉を聞くと反射的に「右翼」「軍国主義」と認識し、毛嫌いするきらいがある。しかし、本来の意味は違う。簡単に言えば、歴史や共同体を大切にし、安定的、文化的で保守的なものだ。ところが、日本の政治は日本人の利益を破壊してきた。一例を挙げれば、雇用市場を不安定化させ、格差を拡大させてきた。移民政策を拡大させ、さらに水道の民営化で海外企業に売却が噂されるなど、かつてならば「国賊」「売国奴」と罵られてきたはずの政治家が「自称保守」を自認する人々に支持されてきた。安倍晋三前総理大臣だ。
安倍氏の後を継いだ菅義偉総理も大した差はない。“政商”竹中平蔵氏、「中小企業の再編」を菅総理に吹き込んだ元ゴールドマン・サックスのデービッド・アトキンソン氏を「成長戦略会議」のメンバーに入れたくらいだ。
おそらく日本の富が海外(特にアメリカ)に流出し続け、日本の貧国化はさらに進む。いつの時代も泣きを見るのは、一般庶民だ。まずは国家とは何かを理解する必要がある。ナショナリズムと近代とは深い関係がある。近代国家について考えるときは、まずはナショナリズムを理解する必要があるのだ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Satoshi
7
保守と呼ばれる人々が礼賛した安倍政権は本当に保守と呼べるのか?彼らが嫌いな中韓に批判的な意見を示したから礼賛されているだけでは?と疑問を持っていた。明確な根拠の無い疑念だったが、本書を読み、間違ってはいないことが分かった。2021/06/07
Masakazu Fujino
7
日本には本当の意味での保守やナショナリズムが存在していなかったという、著書の指摘は大きい意味を持つ。2020/12/20
Eiki Natori
4
安倍は戦前復帰を狙っているという左派や、安倍を「愛国者」という右派ばかりだが、言葉の定義を間違うと本質を誤るという警鐘を鳴らしてきた適菜収さんの新作。「ナショナリズム」という言葉の定義を突き詰める一冊。そこから見えてきたのは「日本には保守が根付かなかったのでなく、日本には元々保守が存在しなかった」という結論。 「ナショナリズムの高揚ではなく衰退」という表現に同意。竹中平蔵やアトキンソンにも言及しているが、ナショナリズムが衰退しているからこそ、こんな連中が跋扈する。引用されている三島の日本語は美しい。 2020/12/01
星辺気楽
0
途中の哲学論は難しい。 2024/05/23