内容説明
――己のために行なったことはみな、己の命とともに消え失せる。(中略)わが身のためだけに用いれば、人の命ほど儚く、むなしいものはない。されどそれを他人のために用いれば、己の生には万金にも値する意味が生じよう。(本文より抜粋)時は天平――。藤原氏が設立した施薬院の仕事に、嫌気が差していた若き官人・蜂田名代だったが、高熱が続いた後、突如熱が下がる不思議な病が次々と発生。それこそが、都を阿鼻叫喚の事態へと陥らせる“疫神(天然痘)”の前兆であった。我が身を顧みず、治療に当たる医師たち。しかし混乱に乗じて、病に効くというお札を民に売りつける者も現われて……。第158回直木賞と第39回吉川英治文学新人賞にWノミネートされた、「天平のパンデミック」を舞台に人間の業を描き切った傑作長編。解説:安部龍太郎。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
101
天平の時代。奈良に新羅への使節が戻る。新羅で得た天然痘が猛威を奮う。施薬院では治療を行うも数多の人々が亡くなる。確たる治療法もない時代、病人の家族は怪しげな護符に縋る。病人の家族は扇動され騒乱も起きる。主人公の名代は施薬院の官人。容赦のない疫病に無力さと無常を感じながらも、治療に当たる医師の綱手の姿に影響を受け成長する。天然痘は度々流行したが治療法が無い時代、多くの犠牲を出した。コロナ禍の現代、ワクチンを例にしても様々な考えや説が飛び交う。自分で情報を判断し流説に惑わされない。現代に通じる内容がある作品。2022/05/05
サンダーバード@怪しいグルメ探検隊・隊鳥
94
奈良時代を舞台にしたパンデミック物。天平年間に新羅からもたらされた天然痘は瞬く間に奈良の都に広がり、貧しき者も貴族も区別することなく命を奪う。全く治療法の無い時代、時の政府は為す術も無く思考停止し、心ある医師は少しでも人々の苦痛を取り去ろうと孤軍奮闘する。怪しげな新興宗教が流行り、流言飛語による暴動で渡来人の命が奪われる。コロナ禍以前に書かれた小説であるが1,300年経った今でも世の中の状況は全くと言っていいほど変わっていないように思える。★★★★2021/04/04
クプクプ
84
澤田瞳子さんの本を読むのは「若冲」に続いて2冊目です。天然痘がテーマの話でした。私はこういう病気や医者がテーマの話はもともと好きなのですが、今回は漢方の植物の名前が漢字で登場したので、より楽しめました。私は東京都薬用植物園へよく行くので、物語に出てくる漢方の植物を読んで東京都薬用植物園のことを思い出しました。私は日本史に疎いですが、澤田瞳子さんの本は、この先も、もっと読んでいきたいと思いました。読書の成功体験になりました。2022/12/18
niisun
80
天平九年(737年)、奈良時代の都を襲った天然痘のパンデミックの只中で、市井の人々を治療した施薬院を舞台とした物語。新羅から戻った遣新羅使の罹患者から広まった感染症。急速な感染拡大の中で広まるデマや差別、便乗商法。政府の無策と医療の崩壊。5年前の2015年に上梓されたというのが不思議なほど、既視感のある出来事が次々と繰り広げられる。歴史は繰り返すとは言え、物語の舞台からは遠く1300年、人類の進歩はいかばかりか。澤田瞳子さんの作品を読むのは4作目。奈良時代を描く稀少な作家さんなので今後の作品も期待したい。2020/12/23
大阪魂
72
澤田さんの歴史本!さすが一気読み!奈良時代、藤原四兄弟が疫病で死亡って日本史でみたけど、その疫病「天然痘」が8万人の奈良人口の3割死なすほど猛威ふるった地獄絵を2人の主人公、施薬院の新米職員・名代と冤罪で侍医から追われた諸男を軸に描かはったお話!ちょっとええなあっておもた登場人物は次々、天然痘とかで退場してくから読んでてつらい💦一方、まじない札売って儲けまくろって悪いやつはなかなか退場せえへんしねー💦そんな中、施薬院の医師・綱手の矜持には医者ってやっぱすごいなって思わせてもろた!コロナ対応も感謝です!2023/04/10
-
- 電子書籍
- 田舎のホームセンター男の自由な異世界生…
-
- 電子書籍
- 【フルカラー】ヤミツキチュウ~私の人生…
-
- 電子書籍
- ボスと秘書の過ち【分冊】 7巻 ハーレ…
-
- 電子書籍
- 払暁 男装魔術師と金の騎士(コミック)…




