内容説明
東京でのドブ浚いの仕事中の事故をきっかけに故郷へと戻ったクザーノは、砂漠のむこうの幻の町へ旅立った――回帰する灼熱の旅が、一族の風景を映し出す。第57回文藝賞受賞の一大叙事詩。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
192
第57回文藝賞受賞作ということで、読みました。 本書は、広大な砂漠の如くの無限ループ純文学でした。独特の世界観、雰囲気があります。登場人物の呼称に複数の葉巻の銘柄をつけるなんて、著者はどれだけ葉巻が好きなのでしょうか? http://www.kawade.co.jp/news/2020/08/57-1.html2020/11/29
buchipanda3
103
いくつもの「風景」が繰り返される。それはクザーノの風景だが、彼の祖父や祖母、父親に母親、そして妻や息子、孫までが見た風景が詰まっている。読んでいるうちにクザーノとその家族の存在が近くなっていた。長い時間が経つと人の記憶は圧縮され、風景は朧気になる。描かれた物語も反復の中で差異がある。妄想か別世界か記憶違いか。それでもその風景を「人生」という言葉に単純化しないものだ。風景には「人々の生きる香り」があるという。その香りを感じながら抱えた重しを枯らそうと旅を続けるものなのだと思う。独特な読み味の小説を楽しめた。2020/12/12
Comit
75
市立図書~この本…すごい。こういう書き方の本を読んだのは初めてです。ある青年の旅立ち、そこから始まる誰かから見た青年の行く末。時には父の視点から、時には息子の視点から、それを何度も繰り返し、物語は綴られていきます。彼らが見た風景が幾重にも重ねられ、既視感ならぬ既読感に陥ります^^;それでいて物語が広い網目のようになっていくのだから、不思議な感じです「旅」を畏れるがために過去にとらわれ、未来を懐かしむ。人生を風景と捉え、関わった人の分だけ風景がある…確かに(笑)~著者初読、文藝賞受賞作( ̄^ ̄ゞ2021/02/03
いっち
64
文藝賞の選評で、磯﨑憲一郎さんと村田沙耶香さんは、『水と礫』が「小説の外に広がる世界を描いている」ようなことを書いていた。本作は、書かれていない外側を想像させる。物語はループもの。ループを繰り返す度、主人公一族の歴史が語られ、物語に広がりが生まれる。主人公は旅をする。「ただ水分としか呼びようのないものが、心の錘(おもり)」となっているからと旅をする。渇きを求めて「礫」がはびこる大地へ進む。「人生は自分だけのものではない」という考え方が良かった。自分の存在を重く考えないからこそ、旅に出られるのかもしれない。2020/12/24
アマニョッキ
54
昨年の文藝賞受賞作品。これは好き嫌いが分かれる作品かもしれない…わたしはめちゃくちゃ好きでした。ループして広がっていく世界線。砂漠、水、空、家族、信仰、旅。架空の町の架空の一族と仲間の物語。多くは語られないけれど、大切なことはたくさん語られている。そうそう、こういう作品が読みたかったんだ!と読書の楽しみを思い出させてくれる一冊でした。しかしここ何年かの文藝はすごいな。他の追随を許してないのでは?2021/02/08
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