内容説明
曲った手で 水をすくう
こぼれても こぼれても
みたされる水の
はげしさに
いつも なみなみと
生命の水は手の中にある
指は曲っていても
天をさすには少しの不自由も感じない
(「曲った手で」)
大きな困難の中にあって、生きることの喜びと光を求め続け、言葉を紡ぎ続けた伝説の詩人。
キリスト教信仰に裏打ちされたひたむきで純粋なことばたち。長く入手困難だった詩作品が、ついによみがえる。
これまでに刊行された二冊の詩集『志樹逸馬詩集』(方向社、1960年)、『島の四季』(編集工房ノア、1984年)に収録された全詩に加え、遺稿ノートから未公刊の詩を選んで編む。
付録の投げ込み栞(若松英輔、込山志保子執筆、8ページ)を電子版では巻末に収録しました。
【もくじ】
詩集『島の四季』
詩集『志樹逸馬詩集』
未公刊詩選
解説(若松英輔)
年譜(込山志保子)
栞(若松英輔、込山志保子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐっちー
14
若松英輔さんは、私に心の指針となる言葉を多く授けて下さる批評家だ。以前、志樹逸馬の詩と出会わせてくれたのも若松さんだ。そして読み終わることが出来ない本を大切にすることを教えてくれたのもまた、若松さんだ。この詩集は一通り目を通すだけで数ヶ月かかった。すっと体に染みた水のような作品もあれば、どうしても飲み込めない石のような作品もある。それで構わない。今は読めなくてもいずれ読めるようになるかもしれない。それまで私は耕す。2020/02/22
チェアー
11
素朴な言葉でつづられた詩。その素朴な自然や恩寵は本当は奇跡的なものであることに、毎日、すべての瞬間で見ているはずのわたしは気づかない。心の目は閉じ、心の耳は塞いでいるから。巻末の年譜が思いがこもって素晴らしい。2020/05/21
メイロング
6
絶対だれにも教えてくない詩集。激しい目立つ言葉はどこにもないけど、どこからでも、読むものとの間に化学反応が起きて、芽が出てどんどん伸びていくイメージ。どの詩がぐっとくるか。読むたびにきっとちがう。静かな部屋で耳を澄ませて読んでいたい。2020/09/01
yumicomachi
6
困難ななかにあって、日常をいつくしみ、心の底から汲んだ詩の言の葉を書きしるすこと。その言の葉が時代を超え、状況を超えて読者の魂をふるわせ癒すこと。そんな小さな奇跡を大きく感じさせられる詩集。著者は1917年生1959年没。ハンセン氏病で13歳より隔離生活を送った。25才で受洗してクリスチャンになる。だが栞文に込山志保子が書いているように、「ハンセン病詩人」や「宗教詩人」と定義してしまうとこのゆたかな詩世界の可能性を狭めてしまうだろう。込山志保子はこの本の年譜も担当している。若松英輔編。2020年1月刊行。2020/04/03
月音
4
志樹逸馬は1930年、13歳で当時は不治の病であったハンセン病を発症、療養所に隔離された。その後、岡山県の島に転院。病篤くなりゆく中で労働・詩作に励み、伴侶と友人、理解者を得たが、1959年43歳の生涯を閉じた。本書は既刊2冊の詩集、未公刊の詩、解説・年譜を収録。この解説・年譜は詩人への並々ならぬ熱情があふれ、評伝として読みがいがある。皮膚はただれ、腐臭を放ち、人は指さして業病(前世の罪による病)だと声をひそめる。己を呪い、人を憎み…、闇の果てに見た光。神の恩寵を信じて、天を仰ぐ。⇒続2025/08/30
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