内容説明
「贅沢は敵」と批判されたパーマネントは、実は戦中も大流行しており、客は店に大行列、防空壕にもパーマネント機が持ち込まれていた。モンペは日中戦争開始後、防空演習で着用され注目を集めたが、実際にはすぐ下火になり、「モンペが不格好で不人気だから防空演習への参加率が悪い」と取り沙汰されたりした。戦時期は統制経済や節約といったイメージで語られがちだが、女性の洋装が広まり、お洒落の意識が変化した時代でもある。統制と流行と近代化の狭間で大きな社会問題となった、女性たちの「お洒落」とは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
73
戦時中の女性たちに抱いていたイメージがガラッと変わった。洋装の人も、膝上ミニスカの人もいたのね(写真が残っている)。戦時中でもパーマをかけることに固執する女性たちの姿も記録されており、確かに、パーマをかけないとまとまらない髪質の女性もたくさんいただろうと共感した。ただ、おしゃれを忘れない女性たちへの排斥運動も根強く、いじめられたり暴力を振るわれるということもあったようだ。コロナ禍における自粛警察を見るようで、日本人のメンタリティーはあまり変わっていないことも思い知らされる。2020/12/16
樋口佳之
44
タイトルはちょっと語弊があると思います。彼女らは非国民であらんと選択していた訳では無いのだから。それでも防空壕の中でパーマというのは率直に驚きでした。これに匹敵するもの男性にはあったのかしら。2021/07/07
TATA
36
こないだまで男性性についての話を読んでたので今度はこちらの作品を。素直に面白かった。戦時中でもパーマはかけるし、モンペはいけてないから履きたくない。厳しい環境でもファッションにはこだわるし、周りやメディアに奢侈と批判されようと自分のオシャレは自分で決める、そんな叫びが聞こえてきます。もう10年以上前になるけど、クアラルンプールのデパートでカラフルなヒジャブを選んでいる女性を見てファッションって大事だなと思ったことが思い出されました。2021/09/19
おかむら
32
映画やドラマに出てくる戦争中の女性のイメージが覆る。パーマ禁止をどれだけ呼びかけられようと美容院に行列する女たち。モンペはちょーダサいからはきたくない女たち。同調圧力に逆らってでもカッコ悪いのは我慢できない女性たち、なんかイイぞ! 国産パーマ機の開発(山野愛子の夫)とか洋裁学校(ドレメ)の話とか、なんか朝ドラ向きのエピソードがいっぱい。戦時にふさわしい服装として国が制定した男性の国民服はみんな着たのに、女性の「婦人標準服」はだれも着なかった。写真を見ると確かにカッコ悪ー。ネットで探してみて。2020/11/29
がらくたどん
25
出口の見えにくいコロナ禍がここまで続くと、どうしても「不要不急」の境界線について考えてしまう。人の生存にとって文化や美意識の「要急」序列は本当にそれほど低く見積もって良いものなのだろうか。ついこの前の戦争でパーマ禁止・モンペ着用という国策宣伝を潜り抜け「自分にとっての要と急」を守ろうとした女性と一部の男性たちの姿を丹念な取材と冷静な記録提示で見せてくれる良書。坂井希久子氏の『花は散っても』と併読すると面白い。そういえば現在90代の母にパーマと手作りワンピースで満面の笑みで写っている戦時下の一葉があります。2021/04/29