内容説明
今こそタブーの封印を解き、あえて『わが闘争』を読み込む時だ。拡大する格差、蔓延するヘイト、弱者切り捨てや排除の論理……世界を覆う不寛容や分断と、それに対抗する劇薬としてのファシズム。現代にも残るナチズムの危うい魅力と悪魔性を問い、危機と災厄の時代を生き抜くための知を伝える感動の熱血集中講座!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
73
現代を一語で表すと「不寛容」だと思う。その象徴がナチズム。本書は、ヒトラーの「わが闘争」の解題であり、「客観性・実証性を無視」「国家は目的ではなく手段」「人種は国家を超える」「宣伝と扇動の使い分け」など、ナチス独特の論法が解説されるが、反知性主義を代表するこの書物には、何の感動も覚えない。むしろ、人類は「寛容より先に不寛容があった」という佐藤さんの指摘にハッとさせられた。プロテスタントとカトリックが、もうこれ以上戦えないと悟って最終的に見出したのが寛容だと言う。そうか、人類は不寛容がデフォルトなのか…。2020/07/15
とよぽん
53
「寛容より先に、不寛容があった」という言葉が強烈だった。ヒトラーの非人道的な思考や言動を、ただ知っているだけだった私にとって、この読書はとても丁寧で的確なヒトラー解題と言える。新潮講座「ファシズムとナチズム」を再構成した本書を読みながら、東大で加藤陽子教授が高校生を相手にした講義の本と共通点があると思った。自分も受講生のように感じ、講師の熱が伝わってくるのだ。最後の質疑応答にも、佐藤 優さんの明快な歯切れのよい人間愛を感じた。2020/09/25
Koichiro Minematsu
51
ヒトラー「わが闘争」を著者が分かりやすく授業形式で解説。優生思想が生み出す「我々だけが生き残る」という考えには恐怖を感じた。また口に出す言葉にも責任を持ちたい。2022/05/15
白玉あずき
48
つくづく思うに「わが闘争」を読む前にこの本を読んで本当に良かった! 「世界征服を企むユダヤ人は極悪」説はあからさまにヒトラーの病的妄想だとわかるのだが、それ以外の労働政策や国家観に、たまにも良い事を言うじゃないかと思ってしまう自分、アブナイアブナイ。確かにヒトラーは読書家だったが、系統的にきちんとした読み方をしたわけではなく、自分の説の補強に使える思想・理論だけを「つまみ食い」。でもそれって世間では普通に多くの人がしていることで。彼の場合、その理屈を下流層・中流層の口に合うように砂糖でまぶして美味しく2020/08/30
パトラッシュ
48
いつの時代いかなる国でも政治的経済的不満が高まれば、異分子への不寛容に解決策を求める政治家が支持される。それを極限まで実行したナチスドイツで、ヒトラーが民族絶滅にまで突っ走った理由を『わが闘争』から読み解く。アーリア民族優越と革命のためのノウハウを説くなど当時のドイツ人にはトンデモ本扱いだったかもしれないが、「ヒトラーは純粋無垢だった」とした歴史家の言葉通り国民への選挙公約を(手段を選ばず)忠実に実行しただけなのか。不寛容を訴える政治家が増え続ける今日、先駆者ヒトラーの政治技術を知る必要を痛感させられる。2020/08/17