けいそうブックス<br> 実践・倫理学 - 現代の問題を考えるために

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けいそうブックス
実践・倫理学 - 現代の問題を考えるために

  • 著者名:児玉聡
  • 価格 ¥2,750(本体¥2,500)
  • 勁草書房(2020/11発売)
  • ポイント 25pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784326154630

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内容説明

倫理に正解はない、というのは本当だろうか? ないと前提するのでなく、難しい問題にも説得力のある根拠によって正しい答えを求めるのが倫理学の議論である。本書では、嘘をつくことや自殺、喫煙や肉食といったテーマをめぐって、世論や権威にまどわされず、倫理的主張の根拠のよしあしを判断する力を身につけることを目指す。

目次

はしがき

第1章 倫理学の基礎
 1 結合性双生児のジョディとマリーのケース
 2 倫理学とは何か
 3 記述と規範
 4 「倫理に正解はない」のか
 5 倫理学の下位分類
 6 直観に基づく倫理と理由に基づく倫理

第2章 死刑は存続させるべきか、廃止すべきか
 1 日本の死刑制度
 2 死刑制度の存廃論(1)──賛成論
 3 死刑制度の存廃論(2)──廃止論
 まとめ 

第3章 嘘をつくこと・約束を破ることの倫理
 1 嘘をついてよい場合はあるか
 2 義務論の考え方
 3 功利主義の考え方
 まとめ 

第4章 自殺と安楽死
 1 自殺することは常に悪いことか
 2 自殺に関するヒュームとカントの議論
 3 安楽死は倫理的に許されるか
 4 治療中止をどう考えるか
 まとめ 

第5章 他者危害原則と喫煙の自由
 1 他者危害原則とパターナリズム
 2 喫煙は個人の自由であるため公共空間で規制はしないという主張
 3 公共空間では規制し、私的空間でしか喫煙はできないという主張
 4 私的空間でも公共空間でも禁煙すべきという主張
 まとめ 

第6章 ベジタリアニズム
 1 動物の愛護と肉食
 2 肉食を正当化する論理
 3 いくつかの反論と応答
 まとめ 

第7章 善いことをする義務
 1 善行の倫理学的な位置付けについて
 2 義務とは何か
 3 カントによる善行の正当化
 4 シンガーの援助義務論
 まとめ 

第8章 善いことをする動機
 1 利他主義についての懐疑
 2 動機は無関係という立場
 3 動機は重要だと考える立場
 4 人々は「やりたいことをやっている」のか
 5 利他主義についての懐疑に答える
 まとめ 

第9章 災害時の倫理─津波てんでんこ
 1 「津波てんでんこ」とは何か
 2 二つの批判
 3 「津波てんでんこ」は利己的な教えか
 4 「津波てんでんこ」と心理的困難さ
 まとめ 

第10章 法と道徳
 1 現代日本の法と道徳に関する理解
 2 法と道徳の教科書的区別とその問題点
 3 法と道徳に関するベンタムの見解
 まとめ 

おわりに
あとがき
引用文献一覧


コラム
 倫理と道徳の関係
 ギュゲスの指輪と思考実験
 リバタリアン・パターナリズム

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

evifrei

17
精神的に重くハードな論題が続くが、逃げずに考え続けることだけが、一人の人間の『生き方の指針となる規範』の獲得を現実にしてくれるのだという事を体言したかのような書籍。過剰な思想の相対主義を批判する点も個人的には納得できる。色々な価値観を尊重するのは大切なことだが、自分は如何なる見解に立つのかを明らかにし、反論となる見解には自説を説得的に示す事は、対話に参加する全ての者に対する誠実さに繋がる楊に思われる。更に本書は思想を変えたら、それに合致するよう行動を変えるべきである事を説く。非常に重いが、読んで良かった。2020/03/23

おおた

16
世の中に怒っている人たちみんなにこの書を捧げる。なぜ怒るのか、怒るには道筋があるのだ。その道筋は倫理。しかし、「倫理学」は哲学を基礎にして個々の事例を判断する際の道しるべになる。世界に怒っている人たちはまず本書を読んで、怒りの原点を探るべきじゃないかしら。世の中の怒りの原点は、実はだいたい語り尽くされてるけど、提示されることはニュースだと足りない。個人的には歳をとって食欲も若い頃ほどではないと思った今、食肉を減らすのもありだなとこの本で考えました。2020/09/14

ネムル

8
著者の『功利主義入門』より一歩進んで、死刑問題・ベジタリアニズム・利他等々の具体的なトピックに沿った、ずばりタイトル通りの倫理学の実践について。功利主義とカントの義務論の間で、慎重に考えるコツがつかめるようになっている。一般的に倫理に反する行為にも、本書ではメスを入れている。考え方をどこまでも慎重に紐解く姿勢が好ましく頼もしい。文章もシンプル明晰で、しばらくはぱらぱらし続けようと思う。2020/07/28

おやぶたんぐ

5
直前に読んだ「つなわたりの倫理学」同様、現実の難問に倫理学の立場から臨む。同じ問題で著者の立場の違い(本書は主として功利主義、「つなわたり」は徳倫理)からもたらされるアプローチの仕方や結論の違いが面白い。もっとも本書の方がより初心者を念頭に置いているようで、読みやすさは上。他方で、考え方や論理展開には首を傾げる点が多い。とりあえず、気になった点をいくつかコメント欄で触れてみる。2024/04/18

Bevel

4
自由主義・他者危害原則・功利主義あたりのつながりで、いわゆる義務論を批判的に取り込むプラットフォームを作るという形。法律も射程にいれた現代の規範一般を扱うとなると、こうじゃないと無理なんだろうな。「津波てんでんこ」が「間接的功利主義」であるなど、切れてる感じがよい。ヘアの二層功利主義の着想の面白さが伝わってきてよかったし(規則と例外の関係など)、アディクションなど、自由を損なう要件を満たすのみ、パターナリズムが許容されるみたいな論点も考えさせられた。2022/02/21

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