内容説明
日本人は五輪と万博に託して、さまざまな夢を見てきた。大きなイベントで国威を発揚し、開催に合わせて都市や郊外を開発することで発展を果たそうとしてきたのである。東京の代々木・渋谷、駒沢、湾岸エリア、大阪の千里丘陵は、五輪と万博によって、風景を大きく変貌させていった。村や町の変化はいったいどのようなものだったのか。またイベントを主導した人々は、どのような発展を思い描いてたのか。
東京で56年ぶりに開催されるオリンピック、また大阪で2025年に予定される2度目の万国博覧会を見据え、近現代の日本が成し遂げた、都市・郊外の開発と変貌の歴史をたどりつつ、巨大イベントがもたらす夢と現実の相克を探る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
不純文學交遊録
4
幻となった1940年の五輪と万博、1964年の東京五輪、中止された世界都市博…国家的祭典の場となった土地の記憶、それは東京の都市計画史でもある。戦後の都知事の無策もあり、復興から五輪への道は無理があった。物語の影の主人公は、東京都知事を4期担った鈴木俊一。1964年東京五輪で副知事、1970年大阪万博では事務総長を務めた地方自治の巨人である。都知事としては都庁移転と臨海副都心開発を進めた。東京五輪が閉幕し、大阪・関西万博を4年後に控えた今、一時的なお祭りに頼らず、持続可能な都市づくりを考えさせる一冊。2021/10/25
優さん@はいカード
1
五輪と万博、その開催に伴う社会や政治・当該地の変化、そして現在(五輪延期となった2020年7月に刊行)施設がどうなったかを丁寧に拾っている。 1964年の東京五輪と1970年の大阪万博だけでなく、幻の1940年の東京五輪が「関東大震災からの復興」を謳ってたとか、中止となった1996年の世界都市博への言及も、興味深い。 あまりにも多くの人を(政治的にも)巻き込むお祭りごとになっている継承への警鐘も感じられ、2021年東京五輪における現在の問題も浮き彫りになってると思う。 名著だ。2021/06/06
takao
1
ふむ2020/11/08
けいちゃん(渡邉恵士老)
1
競技としてのオリンピックや選手、あるいはその経済効果などに着目した本は数多くあるが、本書のように五輪と万博というイベントを巡る社会史を、その関わった土地の歴史とともに記した本はなかったのではないだろうか。 2020年の東京五輪。コロナ禍によって1年延期となったが、それが今後どうなるのか。 本書のⅤ章はまさに現在進行中の物語であり、そのライブ感もあり非常に興味深い内容であった。2020/09/13
灘子
0
筆致が淡々としてるから悲劇が浮かび上がる2020/10/30