春の消息

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春の消息

  • ISBN:9784476033694

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内容説明

東北各地の霊場を探訪し、日本人の死生観をさぐる。盛夏から晩秋、そして初冬へ──。作家(柳美里)と学者(佐藤弘夫)は、魂のゆくえを訪ねて、東北を歩いた。それは、大震災を経験した人々が待ち望む春を探す旅でもあった。……第1部では、地域に残る生者と死者の交歓風景を、佐藤氏によるナビゲーションと柳美里氏によるエッセイを組み合わせて展開。2人は2016年夏から冬にかけて、青森県五所川原市の「賽の河原・川倉地蔵尊」や、「姥捨て伝説」の舞台となった岩手県遠野市のデンデラ野・ダンノハナを訪ね、中世には納骨儀礼の場であった宮城県の松島などを訪れた。さらに東日本大震災の被災地である福島県南相馬市や警戒区域である大熊町にも足を延ばすなど、東北各県で取材を重ねた模様を、佐藤氏による解説と、仙台在住の写真家・宍戸清孝氏による多数の写真で紹介。第2部には、佐藤氏と柳美里氏の対談を収録。生者と死者の織りなす独自の文化の形成と定着について読み解き、未来に向けた死生観・生死観を語り合うとともに、それぞれが体験した「東日本大震災」と、その後の日々についても考察を深める。

目次

はじめに 柳美里
春来る鬼 佐藤弘夫
Ⅰ 死者の記憶
Ⅱ 納骨に見る庶民の霊魂観
Ⅲ 日本人と山
Ⅳ 土地に残る記憶
Ⅴ 生者・死者・異界の住人
Ⅵ 死者のゆくえ
対談「大災害に見舞われた東北で死者と共に生きる」柳美里・佐藤弘夫
エッセイ 柳美里
「蜂占い」
「遺品」
「鳥になって」
「梨の花」
「境界の城」
「春、大きな樹の下で……」
「黒焦げとなった少年」
おわりに 佐藤弘夫

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

NAO

70
東日本大震災でたくさんの人々が亡くなり、死者は、今なお、生きている人々と密接につながっている。この本は、東日本大震災関連の講演の依頼を受けた柳美里と、佐藤弘夫との、死者と生者が共存する場所である東北の霊場巡りの旅だ。かつては、東北に限らず日本の各地に生と死の境界があり、人は、そこを通して死の世界を垣間見た。死は遠いものではなく、死者は生者に寄り添っていた。そういうことが、あまり感じられなくなってきている現代に起きた大震災は、生者とつながり方を問い直しているかのようだ。二人の対談も興味深かった。 2019/04/07

koji

21
東日本大震災から10年、あの日の記憶は全く消えることはありません。しかし当時の映像を繰り返し流し被災者を悼む、おきまりの番組の数々に、少し違和感を感じていました。本書は柳美里さんと東北大大学院の佐藤教授の東北霊場巡り紀行。2017年刊行で当然ながら震災が通底にありますが、寧ろ東北の地が「生死の境界を超えた交流の場」を有する霊場の地であり、「供養とは亡くなった人と楽しむこと」という(近代以後忘れ去られた)死生観をもたらしてくれることを深く洞察していきます。ここに至り漸く東北の人々の思いと繋がれた気がしました2021/03/15

海燕

8
生と死の交わる場所、生者と死者との交歓の地を訪ねて東北地方の寺社仏閣や霊場を巡る旅の記録。「震災の記憶を訪ねる感傷的な旅」かと思うとそんな軽いものではない。これまで、人々が「死」「死者」にどう向き合ってきたのかが垣間見え、写真も豊富で、民俗学の立派なフィールドワークだ。古くは、死者はこの世界の延長の比較的近い場所にいて、生者と容易に交わる環境にあったが、近代化は死者をこの世から排除するプロセスだという佐藤氏の見解は興味深い。サイン本で、見返しに柳氏の「春は生者にも死者にも息吹を与える」の力強い文字。2022/11/05

kyoko

8
死者を巡る旅。写真も多く、興味深く最後まで読んだ。2019/01/19

笛吹岬

5
東北各地の霊場で、民俗世界における死者との関係の在り方を再考する旅。2018/02/14

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