無の国の門:引き裂かれた祖国シリアへの旅

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無の国の門:引き裂かれた祖国シリアへの旅

  • ISBN:9784560097540

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内容説明

内戦下の祖国シリアに一時帰還した作家が、絶え間ない爆撃の下、反体制派の人々の間で暮らしながら、それぞれの苦悩と挫折に耳を傾けた1年間の記録。語り伝えることを通じて、内戦の過酷な現実と向き合う、世界16か国で翻訳された話題作。
アサド大統領と同じくイスラーム教アラウィー派に属する一族の出身である著者は、2011年以降、一貫して反アサド政権の立場をとり、逮捕・拘束を経て同年夏にシリアを脱出した。本書は、2012年8月から2013年7月まで、3度にわたって祖国に戻り、兵士から女性や子供まで、反アサド政権の立場にあるさまざまな人々の声を集め、その体験を書き綴ったものである。
拠点としたのはシリア北西部のイドリブ県サラーキブ市で、住民である協力者一家の庇護を受けて取材を進めた。証言者の数が増えていくと同時に戦況は変化し、協力者一家の大半は出国を余儀なくされていく。
小説家、ジャーナリスト、編集者として活躍するかたわら、著者は女性の自立や子供の教育を支援するNPO団体を設立し、活動を続けている。近年のシリアを見据える新しい世代の特色を鮮やかに示すと同時に、内戦下で生きる市井の人々の声を拾い上げた記録文学の白眉。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

86
人々が、そして子供たちが自由に、平穏に生活できるように。シリアの今後を思い、起こされた無血の革命が荒廃と流血、殺意と疑心暗鬼に摺り替わってしまった。女性をレイプする事を泣きながら拒否した為に上官に殺されたムハンマド氏。守ってくれる筈の武装部隊の言葉は無意味だった事を悟り、神の名を絶叫して麓へと下る老人。崩れた瓦礫から4歳の子供を探していたら焼け焦げた愛用のアヒルの玩具が見つかった事。「空爆の標的にされてしまう」と写真撮影を止める商店の店主。そして守りたかった子供達は戦争の熱に侵されている事実に言葉を失う2020/09/06

Willie the Wildcat

85
属性の定義と、心底の義の交錯。著者が本著で流した涙の種類が、シリアの置かれた複雑な環境を示唆。象徴が帰路、前線を振り返った時に流した涙。真実を伝えるジャーナリズムとしての使命と、アラウィー派の血筋が背負う運命が相容れないジレンマ。本来著者が目的とした主題以上に、出自が齎す著者の心情の描写で、惨劇の異なる一面を垣間見ることができた気がする。改めて認識できるのが、目的と手段の変化に伴い派生する利権を貪る/貪ろうとする輩と、背後に控える大国の思惑。「シリアには永久に戻れない。」で本著を〆る著者。言葉が出ない。2020/09/22

どんぐり

84
トルコとシリアの国境に滞留する爆撃から逃れてきた人の群れ、手足を失った人たち、密航屋、出入国のブローカー、戦争で稼ぐ商人、アラブや外国人のジハード主義の戦闘員たち。2012年、2013年にトルコから祖国シリアへ3度入り、政府軍が落としていく樽爆弾やクラスター爆弾の降り注ぐなかでシリア反体制活動と避難民の人々の証言を記録した女性サマル・ヤズベクの本である。非暴力で始まったシリア革命は、いつのまにか武装闘争に転じ、ジハード主義に乗っ取られ、瓦礫と血に染まってゆく。死とともに生きることが日常になった「無の国」の2020/10/15

キムチ27

58
私ごときが読み下すのは ほぼほぼ不可能内容。「理解できた、泣いた」というのは容易、が所詮欺瞞に感じる・・あらすじを書き並べたレヴューで終わりかねない。装丁の女性・・これがイスラム。筆者は祖国シリアを出たのち、3回故郷に戻っている。1年かけて、同胞の呻きを見聞きし世界中にこの「場面」を伝える事を約し。 半ばまで、感触が曖昧 読み辛かったのは固有名詞が非日常という事~酷似するものが多いのは参った。巻末に簡単な言葉の説明あれどもなかなか咀嚼できない。大国はシリアという舞台で多々の軍を動かし仮想戦線に資金を投与 2020/10/10

あさうみ

29
シリアで起こっている残虐行為に心をつぶす。すごく読みやすい、だから考えずにいられない。シリアにおけるいろいろな人々の目線で描かれる内戦の図は複雑。日常のひとときの次の瞬間には爆撃…それでも人々は死ではなく生きることに向いている。あと、この本に出てくる女性たちは逞しく美しい。2020/03/13

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