内容説明
本書は、雇用労働と連動しながら発展してきた自営業を対象として職業の構成、職業の経歴や所得などの側面からその趨勢を描き直してゆく。それによって、「衰退する自営業」という常識的な理解では片づけることのできない「自営専門職」という萌芽的な存在をあぶりだす。そのうえで、雇われずに働くことの今日的な意味を探求する。
目次
序 章 日本の自営業を読み解く──自営専門職に着目する意図
1.姿を変えて日常に見え隠れする自営業
2.本書における自営業の定義
3.統計データから見る日本の自営業
4.自営業,とりわけ自営専門職に着目する現代的意義
5.本書の構成
付記 本書で用いる社会調査データ
第1章 自営業の見方・測り方──社会階層研究の蓄積と残された研究課題
1.自営業の認識をめぐる問題
2.諸外国の研究動向
3.日本の研究動向
4.本書の検討課題──職業移動/職業構成/職業経歴/所得
補論1 自営業研究におけるその他の対象
補論2 統計データから見る自営業比率・失業率・雇用保護指数
第2章 自営業への/からの移動──失業率との関係に着目して
1.問題の所在──自営業は失業の受け皿になりうるのか
2.方法
3.分析結果
4.失業の受け皿とはなりえない日本の自営業
第3章 自営業の職業構成の趨勢──職業構造の変動を考慮して
1.問題の所在──自営業の職業構成は専門的・技術的職業へと移行しているのか
2.方法
3.分析結果
4.専門職化する自営業
第4章 自営専門職の職業経歴──職歴パターンとその条件の探索
1.問題の所在──自営専門職を経験する人びとの職業経歴の特徴は何か
2.方法
3.分析結果
4.複線的なルートを持つ自営専門職
第5章 自営業の所得構造とその推移──職業間の比較
1.問題の所在──自営専門職は非専門職に比べて稼げるようになっているのか
2.データと変数
3.分析結果
4.自営専門職の内部に生じる所得格差
第6章 自営専門職の所得格差──従業上の地位間の比較
1.問題の所在──自営専門職は常時雇用専門職に比べて稼げるのか
2.方法
3.分析結果
4.自営専門職の両義的な所得構造
終 章 結論と今後の課題──自営専門職から見る働き方の未来
1.各章の要約
2.本書の目的に対する結論
3.専門的職業における自営業という働き方
4.社会階層研究に対する貢献
5.今後の課題と展望
6.おわりに
参考文献
あとがき
人名索引・事項索引
初出一覧