内容説明
巨匠G・K・チェスタトンが、国内政治や国際関係を背景とした事件に与する人間を鋭く描く。さまざまなことを知りすぎているゆえに苦悩するホーン・フィッシャーと、相棒役である新進政治記者のハロルド・マーチ。彼らの推理譚8編と、ノンシリーズ2編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
歩月るな
8
1922年刊行の原書から『奇商クラブ』に訳出されてる『背信の塔』『驕りの木』の二本を除いた一冊。解説にある通りの「チェスタトンらしからぬ真剣味、ゆとりの欠如」の見られる表題後半三作は他のアドベンチャー作品に見られない重苦しさに包まれる。結末にはチェスタトン流の迫力と悲しみが漂う。万能だけどやる気がない探偵と言う人物像もチェスタトンは産んでいたのだな。「動機があるから犯人じゃない」って言うパターンはよく聞くけれど、チェスタトンの筆ならではという感じで描かれ凄く好き。訳書の中では比較的読みやすいが内容が重い。2017/02/02
Gen Kato
4
『少年の心』『塀の穴』『釣り人のこだわり』あたりが好き。チェスタトンは基本的にとても好きな作家なんだけど、人種差別意識があからさまな部分はいただけない。生きた時代の違いは越えがたいのかなあ。2016/10/20
三門 優祐
4
一読では頭に入ってこない、よくよく硬い文章だった(いい意味で)。物語そのものは、時代を感じるもののなかなか面白く、さすがはチェスタトンといったところか。2009/04/03
うさぎ
3
短編集だった。「煙の庭」、あとがきでは面白くないってなってたけど私は好きだったけどなぁ。これ、多分イギリスが舞台だから借りたんだと思う。2014/04/21
春るるる
3
格調がありウィットにも富んでいる粋な文章。でも1900年代前半という時代設定もあってか(時代物は好きなんだけど)心の中で読み上げてしまう私は、なんだかつっかえ気味。何度も読み返してしまう。難解とはちょっと違うような気がするのだけど。でもここまで凝った文章だと翻訳者はたいへんだろうなあ。絵画的な美しさを感じさせる筆力。その意味でも圧巻は(ホーン・フィッシャーシリーズとしての)最終話かな。2009/01/17