講談社学術文庫<br> メルロ=ポンティ 可逆性

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講談社学術文庫
メルロ=ポンティ 可逆性

  • 著者名:鷲田清一【著】
  • 価格 ¥1,265(本体¥1,150)
  • 講談社(2020/10発売)
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  • ISBN:9784065212608

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内容説明

本書は、現象学を前人未踏の域に導いたフランスの哲学者モーリス・メルロ=ポンティ(1908-61年)の生涯と主要著作をていねいにたどる至高の概説書です。『モードの迷宮』(サントリー学芸賞)や『「聴く」ことの力』(桑原武夫学芸賞)など、多くの支持を得てきた著者が、みずからの出発点にある哲学者と真摯に向き合い、全力で格闘した稀有なドキュメントがここにはあります。
フランス西部のロシュフォールで生まれたメルロ=ポンティは、高等師範学校でサルトルやボーヴォワールと知り合うい、そしてフッサールの現象学と出会いました。初めての著作が『行動の構造』(1942年)と題されたように、メルロ=ポンティは「生活世界」に注目した後期フッサールを引き継ぐとともに、その中心に身体をもつ人間を据えることで独自の道を歩み始めます。その最大の成果が主著『知覚の現象学』(1945年)です。
戦後はリヨン大学で教鞭を執ったあと、1949年にはソルボンヌの教授、そして1952年には異例の若さでコレージュ・ド・フランスの教授となったメルロ=ポンティは、サルトルとの共同編集で『レ・タン・モデルヌ(現代)』誌を発刊し、『ヒューマニズムとテロル』(1947年)などでマルクス主義に関する考察を続けることで現実と向き合いました。さらにサルトルの実存主義、ソシュールの言語学を取り入れたメルロ=ポンティは、1960年代にはさらなる高みに到達し、『シーニュ』(1960年)を発表しましたが、翌年、惜しまれながら急逝します。残された遺稿は『見えるものと見えないもの』(1964年)や『世界の散文』(1969年)として公刊されました。
これら燦然と輝く著作の数々を激動する時代の中で繰り広げられた生涯に位置づけつつ精緻に考察していく本書は、まさに著者の「主著」と呼ぶべきものです。このたび学術文庫版として新たな装いをまとうことで、永遠の生命を得ることでしょう。

[本書の内容]
まえがき
プロローグ 現象学の地平へ
第一章 構 造――〈行動〉の研究
第二章 運 動――〈身体〉の現象学
第三章 スティル――〈変換〉の現象学
第四章 偏 差――〈隔たり〉の現象学
第五章 可逆性――〈肉〉の存在論
エピローグ 現象学の臨界点
主要著作ダイジェスト
キーワード解説
読書案内
あとがき
学術文庫版あとがき
メルロ=ポンティ略年譜

目次

まえがき
プロローグ 現象学の地平へ
第一章 構 造――〈行動〉の研究
1 幸福の薄明かりのなかから――履 歴
2 〈かたち〉の論理
3 構造の思考
4 構造と意味
第二章 運 動――〈身体〉の現象学
1 《現象学》の内と外
2 両義性――現象学的思考の開口
3 知覚と運動
4 習慣と感覚
第三章 スティル――〈変換〉の現象学
1 無言の経験
2 一貫した変形
3 スティルの現象学/現象学のスティル
第四章 偏 差――〈隔たり〉の現象学
1 言語と沈黙
2 制度化――歴史の火床
3 厚みと嵩
第五章 可逆性――〈肉〉の存在論
1 リヴァーシブルな地形
2 キアスム、あるいは存在の双葉
3 否定的なもの――〈生まの存在〉
エピローグ 現象学の臨界点
1 現象学の非中心化
2 問いかけの哲学
主要著作ダイジェスト
キーワード解説
読書案内
あとがき
学術文庫版あとがき
メルロ=ポンティ略年譜

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

46
読ませる文章を書くという観点では、シリーズ中で著者は傑出しています。著者の導入がメルロ=ポンティと地続きになっていて入り易いともいえますが、他方で学術的な難しさも十分にあり、いつの間にか絡み合いというか、沼の感触に溺れることになります。粘り強く読んでいかないと読み通せない本でした。前期は構造研究と〈身体〉、中期はスティル論と偏差論、後期は〈肉〉の存在論と分かり易く3期分け、それぞれに〈構成〉の現象学から〈制度化〉の現象学への転位、〈両義性〉の思想から〈可逆性〉への思想の転回、〈身体〉から〈肉〉の思想の身体2022/05/19

ゆきだるま

9
世界は身体を介して繋がっている(五感を通し)。私の中では、自分も世界も他者も繋がっていて行き来しているイメージ。そしてものをみる(認識する)とは同時にものにみられる、つまり主たる視点はなく、可逆的なのだと。またその捉え方、捉われ方にはスティル、つまり人や社会それぞれのやり方がある、といった感じだろうか。そしてやりとりするごとに変移していく、つまり、ものは固定じゃないのだと。また、茫漠な世界のごく一部でそのやりとりがなされてて、それは言葉によってものが取り出されてる感じかな。(だけど言葉も固定じゃない)2022/01/02

またの名

7
文体またはスティルについて:「たとえば言語表現や絵画表現をモデルにとりあげてみると、テクストや画面の構成要素の一つ一つは「ある特有の等価系にしたがって、ちょうど百の羅針盤の百の針のようにたった一つの偏差を示す」ようになっている。テクストや画面に散在している潜在的な意味がある共通したヴェクトルのもとに収斂させられ、そこに一つのまとまった意味空間が開かれる、といった仕組みになっている。そしてこの仕組み、より精確には、ある共通の偏差がそれにしたがって発生するところの指数を、メルロ゠ポンティは〈スティル〉と呼ぶ」2023/06/02

tfj

1
メルロ=ポンティの思想の変容を構造研究と<身体>現象学の前期、スティル論と偏差論の中期、<肉>と可逆性の後期と順を追って取り上げて行く。 可逆性とは主観-客観、精神-身体などの対は「同じ生地(肉)から編まれた」絡み合ったものだという見方で、彼の哲学は第一原理の探求などではなく、それらの対が一方が他方を否定する形で「終局なき裂開の連続」として発生し続けるダイナミズムを、その只中において<生きられたまま>記述しようとする哲学である。 とにかく難解で終始容赦のない300ページ。並々ならぬ忍耐力のいる本です。2021/09/07

うに丼

0
二元体の境目を溶かすようなしなやかさと強かさ 差異によって見えるようになること 規定されてしまうような、あるいは規定されてしまった感覚を思い出すこと2023/12/09

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