内容説明
20世紀中葉以降、もっとも成功を収めた文化表象のひとつ、ゾンビ。ジョージ・ロメロ監督のLiving Dead三部作で描かれたように、ゾンビにはベトナム反戦運動とカウンターカルチャーの挫折(Night of the Living Dead,1968)、ショッピングモールに象徴される極端な消費主義(Dawn of the Dead,1978)、そしてレーガン政権下で深刻化した社会的矛盾(Day of the Dead,1978)等々、つねに時代が刻印されてきた。
世紀が変わり、映画やポップ、ゲームや書籍で(もちろん社会運動の象徴としても)、ゾンビは未曾有のブームを迎えている。この新たなブームを「大衆の珍奇さへの渇望」に回収せず、その含意を考えるところから本書は始まる……
いや、ポピュラー・カルチャーの問題ではない! 米同時多発テロや炭疽菌攻撃を挙げるまでもなく「ゾンビの突発的発生は必ず起こる」。現に米疾病管理予防センターやハイチ政府はすでに対策を講じているではないか。
では、いかにしてゾンビ襲来に備えるのか? この深刻な問いにマジメに挑んだのが本書だ。国際政治学の世界的権威で、ゾンビ研究学会諮問委のドレズナー先生はいかなる結論を見出したのか? 各国首脳が驚愕する、バイオハザードより百倍面白い一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
56
ゾンビを中央に据えると国際政治理論が分かりやすくなり、ゾンビをcovid-19に置き換えるとこれまた。後半1/3は訳者によるサブテキストで、本編とゾンビを理解する上で誠に親切なガイダンスである。筆頭に挙げた参考文献の書名に誤植はご愛敬。2020/06/25
HANA
30
我ら一般市民の行動は、ショッピングモールに籠る一択なわけですが、上の方々は様々な選択を強いられる。というわけで国際政治学者が書いたゾンビについての本。想像していたような各国の行動の予想のようなものではなく、特定の政治思想が取る行動の予想であった。問題点は一部の映画が描いているようにゾンビを意識あるものとして考えている点。個人的にはゾンビは話し合いも意思も持たない災厄そのものなので、そのような立場に立っての予想は是とし難いものがあります。あと国際政治学の基礎教養が必要なのでその点もきつかった。2012/12/16
パトラッシュ
26
世界に恐るべき感染症が流行しても、政府は官僚組織の権限調整に時間を浪費して的外れな対策で失敗し、患者の強制隔離も非人道的との主張で進まない。各国は自国の安全保障と勢力拡張を優先するため国際協力もうまくいかず、世界は病との共生を余儀なくされるーーコロナ禍に翻弄される地球の現状ではなく、もしゾンビが襲来した場合の現実政治はどう対応するかを国際政治学者が予測した結果だ。ゾンビとコロナとを問わず国家の存在を前提とした社会は想定外の巨大な災厄には無力だ。むしろ国家こそが人類破滅につながるのではないかと思えてしまう。2020/07/31
yo
26
【コロナ禍世界の相似形】先日の読書会で紹介したのを機に再読。ゾンビの襲来は、パンデミックと似ている。単にウイルスという触媒があるためというわけではない。人から人へ伝染し、ゾンビへの物理的接近が大変危険であり、そして鼠講的に拡散する点が共通するためだ。本書は「現実にゾンビが拡散した場合に国際政治はどうなるのか」について、国際政治理論が予測する未来を整理した(大変大真面目な)本である。コロナ禍の最中にあるリアルの国際政治がどう動いているのかを併せて考えると、その異同が見えてきて面白いかと思う。2020/05/07
白義
22
現在の世界では、まだゾンビ問題は緊急性のある危機と考えられてはいない。しかし、もしゾンビが実際に現れたらどうすればいいのか?その日が来るまでゾンビについて考えるのを怠るのは、学問の敗北ではないだろうか。しかもゾンビは発生したら、その性質上高確率でグローバルな災害になるのだ。かくして、国際政治学者の著者が立ち上がる。リアリズムやリベラリズムといった国際政治理論が想定する仮想世界にゾンビを放り込み、それぞれどのように人類が対処するかをシミュレートしたゾンビ問題&国際政治学入門が本書だ2014/12/17
-
- 電子書籍
- ホームラン 2022年11月号
-
- 電子書籍
- 白山と三田さん(3) 少年サンデーコミ…
-
- 電子書籍
- 嫁姑は仲良くケンカする(分冊版) 【第…
-
- 電子書籍
- 結城ちかデジタル写真集 ちかっ! アイ…
-
- 電子書籍
- 女子学生はどう闘ってきたのか