ちくま新書<br> ロマネスクとは何か ──石とぶどうの精神史

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ちくま新書
ロマネスクとは何か ──石とぶどうの精神史

  • 著者名:酒井健【著】
  • 価格 ¥990(本体¥900)
  • 筑摩書房(2020/10発売)
  • ポイント 9pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480073334

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内容説明

教会堂を飾る奇怪な彫刻の群れ、異様な幻視に取り憑かれた修道士、黒いマリア像、戦いで浴びた血を浄め天を望む祈りの声……厳粛なキリスト教を笑うかのような大らかで過剰な表象に満ちたロマネスク。10世紀から12世紀半ばにかけて、豊かな自然を背景に新たな信仰を模索した人々は、天上に神を仰ぐ一神教を維持しつつ、自然界に神々の現れを見る異教を受け入れて、垂直と水平の両方の視界の「つながり」を求めた。近年の西洋中世研究の成果をふんだんに織り込み、ロマネスクの時代精神に光を当てる待望の書。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アキ

95
ヨーロッパの大聖堂に行くとゴシックやバロックなどの豪華絢爛さに目が行くが、その基にロマネスク様式があったものも少なくない。19世紀はじめに教会建築用に生み出された言葉であるロマネスクとは、「古代ローマ風」ということであり、古代ローマの模倣ではない。11世紀キリスト教とその土地固有の信仰が混ざり曖昧なものを形にした建築には、土地の石やぶどうの木が使われることも多かった。フランスやスペインの多くの教会を紹介しているが、個人的にはニューヨーク・メトロポリタン美術館分館のクロイスターズがマイベストスポットですね。2024/11/09

Francis

15
中世ヨーロッパの「ロマネスク」について考察した本。ヨーロッパがキリスト教以前の「異教的世界」からどのようにしてキリスト教社会になっていったかが良く理解できる。ローマ帝国で行われていた祭儀宗教が古代ユダヤ教のモーセ五書に規定された捧げものとそれほど変わらないように思えたり、古代ユダヤ教と異教的世界に親和性があったため「ギリシア語を話すユダヤ教徒」がヨーロッパ社会に根付いたことも興味深かった。2021/11/13

eirianda

14
今までロマネスクがどういうものかよくわかっていなかったのだけど、アニミズムとキリスト教が混在し曖昧さのあるものだとわかって、より興味がわく。時代の精神性がよくわかる本だった。キリストの血肉であるワインの説明も腑に落ちた。去年訪ねたモンサンミッシェル、この本を読んでからの方が良かったかも。あそこはロマネスクとゴシックが混ざっていてとても美しい教会だったなぁ。次はゴシック読む。2020/12/01

chang_ume

11
キリスト教と在地信仰の混淆としてロマネスクを理解していく。それはもう異教的とさえ呼べるもので、悪魔や魔物たちもユーモラスな描画となる。古代ローマの「線の美学」とはまた別次元の「あいまいさ」は、中世前期キリスト教の意外な鷹揚さを感じさせるものです。事例としてはフランスの教会建築・絵画が主。一方でこちらが訪問したローマ市内ロマネスク教会の数多くは、どちらかといえば質実剛健な印象が強く、本書で紹介される装飾性豊かな美術とはまた異なるようにも。どうもアルプスをはさんだイタリア半島とフランスで地域色がありそうだ。2020/11/04

ろべると

8
ロマネスクとは「ローマ風の」という意味で、後年名付けられたものだが、本書ではローマ帝国の時代からロマネスクへとつながる流れに分け入っている。ロマネスクは決してローマ文化の劣性遺伝などではなく、ローマ文化とヨーロッパ各地のローカルな文化との融合によって新たな魅力を獲得したのだ。そこには一神教と多神教、都市と農村、理性と感性といった異種混合による新反応が突発的に起こっているかのようだ。それは決して画一的でなく、理路整然ともしておらず、ゆえに後世からもミステリアスな時代として気になる存在なのではないだろうか。2022/05/31

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