『こち亀』社会論 超一級の文化史料を読み解く

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『こち亀』社会論 超一級の文化史料を読み解く

  • 著者名:稲田豊史【著】
  • 価格 ¥1,870(本体¥1,700)
  • イースト・プレス(2020/10発売)
  • ポイント 17pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784781619187

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内容説明

『こち亀』は現代の「浮世絵」だ!

庶民の金回り、地価変動と田舎ディス、テクノロジー信奉とガジェットの変遷、サブカルチャーの地位と文化系ヒエラルキー、ビジネス・アイデアとハック思考、漫画的表現とポリティカル・コレクトネス
……大衆社会を定点観測し続けた連載40年、全200巻の偉業から昭和~平成日本の歩みを追う。

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『こちら葛飾区亀有公園前派出所』とは?
◎秋本治による国民的漫画
◎「週刊少年ジャンプ」1976年42号から2016年42号まで連載
◎コミックス全200巻はギネス世界記録

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 浮世絵の特徴は大きく3つ。上から目線の芸術ではなく大衆・庶民のための娯楽であったこと、「時代の今」「大衆のニーズ」を素早く取り入れていたこと、精緻な描き込みによる史料的価値があること――だ。
 『こち亀』は、この3点を完全に満たしている。世俗を非エスタブリッシュメント、すなわち生活者の目線で描き、社会や人々の生活・気分・好奇心を、濃厚なまま、希釈することなく、過剰な装飾で見栄え良く整えることなく、できるだけその時代の空気をとじこめる形で、そのまま史料保存した漫画作品。それが『こち亀』だ。
<略>
 『こち亀』はバイオレンスポリスアクションであり、マニアックな男の子ホビーやサブカルの啓蒙書であり、ブームやトレンドや新製品をいち早く紹介する情報漫画であり、さまざまな職業を疑似体験させてくれる体験レポートであり、社会や経済やビジネスの仕組みを子供にもわかるよう噛み砕いて説明する解説本であり、あらゆる知識の教養書であり、雑学書であり、下町文化の広報メディアであり、下町人情物語であり、東京の都市論だ。そして、以上の要素のかなり多くが、その時代ごとの世相を完璧に──すべて大衆目線という完全定点観測という手法をもって──反映された形で作品に盛り込まれている。
<「第0章 「浮世絵」としての『こち亀』」より>

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 『こち亀』が何より大事にしているのは、常に、「昔」より「今」だ。描かれた時点が、『こち亀』にとっては常に最高の今。時に昔を懐かしんだり、ノスタルジーに耽ったりしても、両津は「昔と違って今は苦痛」だとは言わない。今を憂えて鬱に沈んだりもしない。
 もし、この時代に不満があるなら、両津は変えようとする。変えようとしてきた。世の中の仕組みを、古臭い慣習を。そのためにビジネスを興し、街ごと作り変え、国政に出ようとまでした。両津は時代を精いっぱい肯定する。否、肯定できる世の中に変える努力をしてきた。両津は世捨て人や孤高の隠居生活を善 しとしない。
 時代にコミットすることに苦痛を感じるどころか大きな喜びを感じる両津は、最新のものに飛びつき(初物好きであり)、今を享楽的に生きる(宵越しの銭を持たない)。それは両津が生粋の江戸っ子であると同時に、圧倒的に現在を肯定している証左でもある。
<「第8章 『こち亀』とはなんだったのか」より>

【目次】
第0章 「浮世絵」としての『こち亀』
第1章 庶民目線の生活と経済
第2章 住宅と都市論からみる東京の昭和・平成史
第3章 『こち亀』が添い寝した技術立国ニッポン
第4章 逸脱者を嗤え
第5章 文化教養リテラシー植え付け装置
第6章 ビジネスの教科書
第7章 ポリティカル・コレクトネス考
第8章 『こち亀』とはなんだったのか
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

breguet4194q

126
人気漫画でよくある○○徹底分析読本とは一線を画す一冊。所詮、ギャグ漫画だから面白ければいいじゃん、と言う思いがベースにあるが、きちんと社会論としての切り口から、持論を展開できてるから面白い。「こち亀」と同世代を生きる者にとって、連載していた40年間は自分にとってどんな時代だったのか。ノスタルジックになる訳ではないが、人生をちょっと振り返る事ができるのが心地いい。改めて漫画を読みたくなった。2023/06/16

アナクマ

46
こち亀は、昭和後期〜平成日本の大衆(男性)社会を読み解く超一級の文化資料。そこにはあらゆるハウツー・サブカル情報があった。◉0章_浮世絵とこち亀。7章_ポリコレ考。この辺りをドキドキしながら読む。というのも、無邪気に(!)読んだ過去が今の基準で裁かれる構図になるから(志村けんやとんねるずの往年のネタが別角度から指摘されるように)◉本章の主旨はその錯誤をあげつらうことではなく、社会の写し鏡としての記録性と価値を確認してゆくものだ。しかし、自分自身の変化/変節/成熟などに向き合わざるを得ないことにもなる。→2021/09/29

yyrn

38
そんなに上手な絵でもなく、毎回の読み切りなのにオチがあったりなかったり、何が評価されて40年も連載が続いたのか?不思議に思う人は第0章だけでも立ち読みすると腑に落ちると思う。▼確かに、昭和後期のバブル時代から平成の終わりまでの、その時々の世相や風俗、庶民の願望や当時の最先端技術の功罪を子供にも分かり易く描いた現代の「浮世絵」だったという解説は納得で、いま読むと当時と現代の差をまざまざと見せつけられるし、単なるノスタルジーだけではない、風俗史料としての価値が認められると思う。また、子供にとっては⇒2020/11/20

kei-zu

35
先日読んだ「両さんの時代」は著者のコメントも入ったライトな構成でしたが、連載終了後に全作を振り返る本書は読み応えがあります。 融通無碍に時代に合わせて変わる作風も超長期連載ならでは。連載当初の女性蔑視の視点が徐々に改められていく経緯には、なるほど。オタクも、当初は否定的な描写の対象であったとの指摘には、そうだったなぁです。 著者は、麻里愛(マリア)と擬宝珠纏(ぎぼしまとい)の登場が読者を減らしたと書きますが、すいません、私は纏で脱落しました(^。^;)2023/05/05

アナクマ

35
1章4章_両津は逸脱者(暴走族や軟弱で金持ちの若者、権力者など)を嗤う。金儲け行為を誇張して盛大に参加するくせに、庶民目線でそれをいじることも忘れない。また、地元の一大事である震災や五輪とは世論の動向にあわせて慎重に距離をとる。型破りキャラに見えて大衆迎合的なのである。◉私はこう思う。長期連載漫画の主人公に、人格の厳密な一貫性を求めてもそれは無意味だ(寅さん同様に)。時代と「添い寝した」キャラのふるまいは、瞬間瞬間を楽しく充実させて生きようとする多数の我々そのものである。だから支持され読まれたのだろう。→2021/10/07

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