内容説明
ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』は、多くの音楽ファンの心を烈しく揺さぶる一大傑作である。また『ニーベルンゲンの歌』は古代ゲルマンの英雄伝説を素に、13世紀初頭に成立した一大叙事詩である。両者に共通する「ニーベルング(ゲン)」は地下に住む妖精の名前である。そしてこの侏儒がとてつもない財宝を所有していた。この財宝をめぐってさまざまな闘争が繰り広げられ、壮大な物語へと発展していくのである。この物語の主人公ジークフリートのルーツはどこにあるのか。古代ゲルマンの「竜退治」「財宝獲得」の英雄伝説や北欧の伝承『歌謡エッダ』『サガ』などの系譜を辿り、また、主人公の人間像と楽劇の魅力を徹底的に読み解き、ドイツ文化の特質とその精神の核心に鋭く迫る。
〔文庫書き下ろし〕
第1章 ニーベルンゲン伝説の生成
第2章 北欧への伝承
第3章 ドイツ中世英雄叙事詩『ニーベルンゲンの歌』
第4章 新しいタイプの伝承
第5章 ドイツ・ロマン派による伝承
第6章 19世紀における戯曲作品
第7章 ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』4部作
第8章 20世紀のジークフリート伝説
結び ジークフリート伝説の系譜
目次
第1章 ニーベルンゲン伝説の生成
第2章 北欧への伝承
第3章 ドイツ中世英雄叙事詩『ニーベルンゲンの歌』
第4章 新しいタイプの伝承
第5章 ドイツ・ロマン派による伝承
第6章 19世紀における戯曲作品
第7章 ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』4部作
第8章 20世紀のジークフリート伝説
結び ジークフリート伝説の系譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Aminadab
25
同著者同文庫の前作『「ニーベルンゲンの歌」を読む』と重複がはなはだ多いが、ワーグナーの重要材源である「ヴォルスンガ・サガ」の解説はこちらにしかないから、『指輪』愛聴者は両方読まないといけない。『歌』があって、北欧の〈サガ〉、近世ドイツ語の民衆本、ロマン主義のバラッド、19世紀のヘッベルの戯曲などがあって、その蓄積の上に初めて『指輪』がある。そういう作品ひとつひとつを読んで、重複をいとわず丁寧に筋書を言語化しているところがこの2冊の美点か。大学紀要論文をまとめるとこうなるのだが、『指輪』ファンには必携。2024/08/22
よみ
10
ジークフリートが好きだから読みました!シグルドも好きです!…ってソシャゲの話はさておき、著者の石川さんはこの分野の第一人者なのだろうなぁ、と鋭い洞察と深い知識に感服。2019/03/23
みよちゃん
6
好きなニーベルングの指環の詳細が書かれ、参考になりました。ワーグナーの曲はあまり聞いてないですが、指輪の力や英雄の最期の描き方がドラマティックで何度読んでも面白い事を再認識した。2018/11/16
サアベドラ
3
中世アイスランドの『ヴォルスンガサガ』、『ティードレクスサガ』、ドイツの『ニーベルンゲンの歌』、ヴァーグナーの『ニーベルングの指環』など、一連のジークフリート伝説群のあらすじが時系列順に並べてある。未訳・入手困難な作品の概要が読めるのはありがたい。2009/12/01
結城あすか
2
これはワーグナーの『ニーベルンゲンの指環』に描かれてるジークフリートの物語を中世文学『ニーベルンゲンの歌』やその源流となるドイツ古謡、北欧神話のシグルト伝説まで遡って、その変遷を見ていく本だにょ。本格的に物語を知ろうと思ったらそれぞれ原典に当たるしか無いのだけど、そのためのガイドブックとしては適当な本だと思うにょ。2005/12/26