内容説明
「お宅の旦那はあの歌曲集の中で一つ、やってはいけないことをした」。シューマンの妻・クララのもとにある日偽名による脅迫状が届く。シューマンの作品の評価を貶める決定的な証拠を入手したというのだ。夫婦の友人・ブラームスは、ハイネの詩をもとに創られた連作歌曲集「詩人の恋」にこめられた謎を追い、ベルリンに向かうが……。一方、180年の時を経た現代では、恋に悩む高校生、大学生指揮者、ベルリンを訪れた大学教員が「詩人の恋」をめぐって不可解な出来事に遭遇していた……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
オーウェン
53
シューマンが作曲した詩人の恋にまつわる7つの話。 あくまでも関わったり、きっかけという形であり、音楽に対する知識のひけらかしがこれでもかとある。 だからとっつきにくい部分が多かった話ばかり。 第三部の恋模様を彩る使い方ぐらいが一番分かりやすいのかも。 ラストは芸術探偵瞬一郎が登場する話だが、事件とかではなく詩人の恋に秘められた想いの解説などで、期待する話じゃなかったのは残念。2020/11/26
雪紫
43
シューマンが作曲した「詩人の恋」に謎がある?現代の日本人達が「詩人の恋」に関わったことで謎とツッコミを抱き、各人様々なラブストーリーとして進めて行きながらも、ラストで瞬一郎がミステリに変え、カキと共に美味しい解決を持っていく。視点人物やテイストの様々な変更、今時の現代人だから抱ける疑問とツッコミで知識と謎を頭に入れさせ、ファンに嬉しいサプライズとだからこその盛り上がりが評論として出せるだけの題材を恋愛混ぜ混ぜな歴史ミステリ闇鍋として昇華させている。深水さんの頭って柔軟だよね(超褒め言葉)。 2020/12/16
薦渕雅春
37
「天才音楽家が名曲に秘めた謎。」シューマン、妻のクララ、そして夫婦の友人・ブラームス、ハイネの詩をもとに創られた連作歌曲集「詩人の恋」に秘められた謎。過去と現代を行き来しながら名曲の謎に迫るミステリー 。ロマンスと言ってもいい歴史上に残る芸術をテーマにしたストーリーか!著者は音楽における造詣が深く、歴史上の考察にも優れていると思う。詳しくない私とかが読んでいると難しいことばかりで理解出来ない点も多いが、ストーリーには引き込まれるものがある。現代でのストーリーには少しずつ繋がりがあったり、工夫も感じられた。2021/03/19
燃えつきた棒
32
お気に入りの深水黎一郎の本ではあるが、かなり読者を選ぶ本だと思う。 シューマンが好きな訳でもなく、音楽の素養もなく、ドイツ語も分からない僕は、残念ながら選ばれなかったようだ。 シューマンの歌曲集『詩人の恋』にまつわる謎を、芸術探偵が解き明かすという趣向。 ホトケひとつだに なきぞ悲しき といった感じ。 おまけに、物語の第三部を読んでいるとき、一つの違和感を感じて、それが最後まで引っかかってしまって、あまり楽しめなかった。2021/07/06
rosetta
31
作者の得意な芸術の分野で新たな歴史的謎と解釈。ブラームスの時代から始まりそういう謹厳なタイプの話かと思うと、現代の高校男子が買ったCDを毎日1曲づつじっくりと聴く軽いタッチに変わり、シューマンの未発見の手紙から真相を仄めかし、定演で『詩人』を上演しようとする大学合唱団から歌詞への疑問を呈させ、最後に芸術探偵が鮮やかに新解釈を披露する。最終章のやり取りは何故か古野まほろを彷彿とさせる(笑) しかし興味のない人には退屈な説明が長々と続く小説に思えるだろうな。連続殺人の作中では未解決だし、少しとっ散らかってる?2020/10/28
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