内容説明
ネット上の行動履歴から利用者の特性を把握し、カスタマイズした情報を流すことで行動に影響を及ぼす「マイクロターゲティング」。フェイスブックから膨大な個人情報を盗みこれを利用したのがケンブリッジ・アナリティカなる組織だ。彼らは何のために国家の分断を煽り、選挙結果を操ったのか。元社員による衝撃の告発。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
65
無法地帯のSNSで思考の不備を突く。ルーディックループ、公正世界仮説JWHなどを踏まえた、Polical correctnessという”餌”。ヒトや組織の変化。直接・間接的なプライミング効果とも言える。象と驢馬共にCAのクライアントという事実なども、法的問題はなくも倫理観は問われる。著者SCL退職時の両親への相談の件は印象的。SNSの匿名性とコモディティ化した人間行動の齎す認知セグリゲーション。字面だけでも、世知辛い世の中。技術視点の本著と、組織視点のカイザー女史の『告発』。警鐘になることを信じるのみ。 2021/07/09
チャー
14
デジタル技術が政治に多大な影響を与えたとする著者の記録を綴った本。SNSの普及でオンライン上でつながることが容易となった昨今は、ときに個人の趣味趣向、思想に至るまでを大衆にさらす状況となる。そこに表示される広告やコメントは、ユーザーが興味を惹くものという点で便利ではあるが、それらが意図的に操作されていたという著者の記録は衝撃的な内容であった。信念や思想の点で情報を利用し集団を操作する方法は高度化した情報戦の最先端であるが倫理的な問題がある。グレーゾーンの境界線は曖昧であるが冷静な判断は必要と感じた。2021/12/11
羊山羊
10
警告の書にして、トランプ元大統領在任中の全世界の政治トレンドの決算書にして2020年最大のビジネス書の1つにてワクワクする政治冒険譚。非常に多層性のある1冊。ネットに発信された無限の個人情報を収集・分析してある個人に特定の情報を提供することで思想を意図的に誘導してしまう。P95で著者とあのバノン氏が「文化トレンドの定量化」と言及しているが、正に文化トレンドの兵器化に成功したのが著者でありバノン氏だ。2021/03/23
ちびたろん
3
かなり重たい事件だと思うが、日本ではさほど話題になってないのかもしれない。でも、自分も知らないところでかなり価値観を操作されてるんだろうな…と恐ろしくなる。 12章あたりは、みんな読んだほうがいい内容だと思った。 そして、数ヶ月後には忘れて、個人情報をあちこちで垂れ流し、マインドハッキングされて、物欲をたぎらせてるんだろうな…やだなぁ2021/07/03
かるてぶらんしぇ
3
若き技術者がケンブリッジアナリティカを立ち上げ、同社のUSA及びUKでの選挙戦における不正を告発するまでの顛末を書いた実話。小国であれば、ビッグデータのマイニングと適切なプロパガンダで簡単に選挙をハック出来てしまうと軽く書かれていて、恐ろしさを感じた。AIとポピュリズムと相性が良く、仮想敵を創り上げれば人は簡単にコントロールされてしまう。人間の自由意志とはなんと儚いものか。2021/05/13