内容説明
わが国は未曾有の少子高齢化社会を迎え、グローバル化、AI化の波に直面するなど、法と経済学の観点から取り組むべき課題が多くある。また民法改正と相まって、消費者問題などの現代的課題や民事訴訟の課題、公共政策また国際取引での対応などが問われている。本書は、この法と経済学の基礎分野と応用分野の研究成果である。
目次
はしがき
基礎編
第1章 契約法の法と経済学(I)[細江守紀]
1.1 法と経済学
1.2 契約の自由とコミットメント
1.3 契約法
1.4 契約問題――情報の非対称性,契約の不完備性,取引費用
1.5 意思表示(I)――心裡留保
1.6 意思表示(II)――錯誤
1.7 錯誤と情報開示
参考文献
第2章 契約法の法と経済学(II)[細江守紀]
2.1 債務不履行
2.2 事情変更の原則
2.3 契約違反に対する救済
2.4 アメリカ契約法と効率的契約違反
2.5 履行利益ルールと信頼支出の効率性
2.6 損害賠償の範囲と特別損害
2.7 約定損害賠償
2.8 継続的取引と契約解消
参考文献
第3章 不法行為法の法と経済学[池田康弘・細江守紀]
3.1 不法行為法とは
3.2 不法行為法の目的
3.3 過失責任ルール
3.4 双方注意のもとでの過失責任ルール
3.5 厳格責任ルール
3.6 使用者責任
3.7 製造物責任
参考文献
展開編
第4章 消費者撤回権の経済的合理性[山本顯治]
4.1 はじめに
4.2 消費者撤回権の社会合理性条件
4.3 有償撤回権の合理性
4.4 無償撤回権との比較
4.5 法的含意
4.6 おわりに
参考文献
第5章 チケット不正転売禁止法の経済分析[座主祥伸]
5.1 はじめに
5.2 転売が生じるメカニズム
5.3 転売の経済学的な評価
5.4 「不正転売」を防止する方策
5.5 本当の不正防止のためには柔軟な価格設定を
5.6 おわりに
参考文献
第6章 不実表示,詐欺,および消費者保護[後藤剛史]
6.1 はじめに
6.2 詐欺あるいは不当表示のデメリット
6.3 詐欺あるいは不当表示のメリット
6.4 詐欺あるいは不実表示の抑止
6.5 おわりに
参考文献
第7章 情報開示政策と最適責任ルール[境和彦]
7.1 はじめに
7.2 モデル
7.3 自発的開示
7.4 強制開示
7.5 最適責任ルール
7.6 おわりに
参考文献
第8章 楽観性バイアス,契約不履行の法的救済制度と進化[佐藤茂春]
8.1 はじめに
8.2 モデル
8.3 数値シミュレーションの結果
8.4 おわりに
参考文献
第9章 懲罰的賠償と利益吐き出し――消費者詐欺の事例によるサーベイ実験[森大輔・高橋脩一]
9.1 はじめに
9.2 懲罰的損害賠償と利益吐き出しの概要
9.3 法と経済学の観点から見た利益吐き出し型損害賠償
9.4 アンケート調査の方法と内容
9.5 調査結果の分析
9.6 おわりに
参考文献
第10章 環境問題における拡大責任[後藤大策]
10.1 はじめに:環境利用権の初期割当とコースの定理
10.2 賠償責任ルールの役割と限界
10.3 拡大責任
10.4 おわりに
参考文献
第11章 民事訴訟と弁護士費用負担ルールの法と経済学[熊谷啓希]
11.1 民事訴訟と紛争
11.2 訴訟と和解
11.3 弁護士費用敗訴者負担ルールの法と経済分析
11.4 おわりに
参考文献
第12章 競争政策の法と経済学[荒井弘毅]
12.1 はじめに
12.2 アメリカでの価格マークアップの動向
12.3 マクロ経済学と市場支配力
12.4 法と経済学の基盤となる実証的産業組織論
12.5 反トラスト法の執行
12.6 おわりに
付録:競争法の実証分析のために
参考文献
第13章 行政訴訟の法と経済学的分析[福井秀夫]
13.1 はじめに
13.2 公法の意義
13.3 政府が行政法規等を通じて私人に関与する理由
ほか