内容説明
「垣根涼介の時代小説こそ
真に『独創的』という言葉がふさわしい。」
――恩田陸氏
何故おれは、裏切られ続けて死にゆくのか――。
斯界の絶賛を受けた歴史長編、ついに文庫化!
織田信長は、幼少時から孤独と、満たされぬ怒りを抱えていた。
家督を継ぎ、戦に明け暮れていた信長はある日、奇妙な法則に気づく。
どんなに鍛え上げた兵団でも、働きが鈍る者が必ず出る。その比率は、幼い頃に見た蟻と同じだ。人間も、蟻と同じなのか……と。
信長は周囲の愚かさに苛立ちながらも、軍事・経済の両面で戦国の常識を次々と打破。怒濤の血戦を制してゆく。
不変の“法則”と史実が融合した革新的エンタテインメント!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
420
展開も速く面白い。そもそも信長を描いたものは、古くは江戸時代初頭の『信長公記』をはじめ、いずれも豊富なエピソードとスピード感あふれるプロットを最初から手にしたようなものである。さて、これまでの数ある信長物語の中で、本書の特徴はといえば、タイトルにも掲げられた「原理」を一つの軸としていることだろう。ここでいう「原理」の総体はまだ明らかではないが、少なくても上巻では、信長が蟻の観察から得た「2:6:2」の法則がそうなのだろう。もちろん、これは長谷川英祐の『働かないアリに意義がある』によるものである。2023/01/26
W-G
345
今までにない観点で信長が描かれており、新鮮な気持ちで読める。まだ前半のみだか、この後も上手くパレートの法則を当てはめていけるのか、都合のいい時だけ持ち出してくるのかで評価が変わりそう。下巻になると、様々な小説で語り尽くされている時代に突入するので、幼少期を含むこの上巻の方が面白いのではないかという気がしないでもない。秀吉と光秀の内面をどういう案配で見せるかが鍵になるのではないだろうか。もしくは家康が存在感を発揮する展開か。『光秀の定理』を読んでいないが、この作品の光秀とリンクしているのかも気になる。2021/07/09
yoshida
135
織田信長の苛烈な行動や思考を分析した、新たな時代小説と言える。様々な作家さんにより描かれた織田信長。心情や情緒ではなく、現実的な分析や考察は津本陽さんの「下天は夢か」に近いアプローチと思う。うつけと言われた頃からの信長のリアリストぶり。組織論で現代社会でも言われる、組織は2割の人員が必死に働き回していることにも触れている。人にはそれぞれの背景がある。背水の陣で必死に働かざるを得ない人。余裕あり、または出世欲なくそれなりで働く人。そもそもやる気がなく、ぶら下がる人。現代でも変わらぬ現実。着想の妙がある作品。2021/01/01
ミュポトワ@猫mode
103
さま~ずの三村さんがYouTubeで絶賛したので買った本。だいぶ積んでいたので、この機会に読んでみた。この本はだいぶ読みやすい。タイトルでかなり損をしている気がする。そんな難しい本ではないです。史実に沿った形で、信長がどう考えたかを書いた本ですね。小説仕立てになっているから普段、小説しか読まない人にもとっつきやすいと思います。続けて下巻読んでいきます。2023/08/26
chantal(シャンタール)
92
まだ「うつけ殿」と呼ばれていた子供時代、蟻の行列を観察し、その行動原理を悟った信長。苛烈な性格で恐れられ、周りからはなかなか理解されないが、信長には信長の原理原則があり、それに則って行動している。良いものは良い、悪いものは悪い、その人を好きかどうかではない。どう考えてもボンクラ上司より、努力に報いてくれる上司の方がいいよなあと、自分の会社の事など思い出してみる。それにしても、お父さんにひとを見る目があって良かったよ。これまで、戦国ものは沢山読んで来たけど、信長が主役のものって初めて読むかも。下巻へ!2020/11/09
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