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内容説明
自閉症児者が方言をしゃべらないという噂は本当なのか? 方言の社会的機能説、意図理解、自閉症児者の言語習得、自閉症児者のコミュニケーションの特異性等、筆者の飽くなき探究心から見えてきた真相とは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいまある
155
自閉症は方言を話さない。当たり前である。TVのアナウンサーのような言葉を使うって教科書に書いてあるじゃろ、と、思考停止してはいけない。何故方言を使わないのか。相手と距離を置きたいからか、発声に個性があって発音しにくいのか。10年かけて研究する内、方言とは何か、言葉とは何かというテーマに突き当たる。人は言葉を獲得する時、同じ物を見ているのである。同時に見ている物を表す言葉が名詞になるのである。感情を共有しない者は、TVなどから一生懸命学習する。じゃりン子チエを字幕付きで見ればきっと関西弁も喋れるようになる。2020/12/02
はっせー
113
多様性や言語について考える人におすすめの本になっている!松本さんと奥さんの会話で自閉症の子は津軽弁を話さないというテーマになった。そこから松本さんが自閉症や方言について調べてまとめたのがこの本になっている。自閉症の子は言葉を親から学ぶのではなく映像などから覚える。それも丸暗記で。そのためそこに流れている言葉こそ標準語のため方言を覚えられない。また方言の社会性に関しては平野啓一郎さん『私とは何か個人から分人へ』という本と相性がいいような気がする。そのためこの本とともに平野さんの本も読むと面白いと思う!2022/11/16
しいたけ
106
そもそも、本でも触れられているように自閉スペクトラムの中でも濃淡やら厚薄やら千差万別ひと其々である。その中で現場では、サンドウィッチ解体して並べるよね〜、皮膚感覚で服選ぶよね〜、絆創膏大好きだよね〜、狭い弁当屋のモーター音耐えられないよね〜、と認識しあう。その一つが「方言を話さない」なのだろう。診断名は単にサービス供受の便利性のため。一人一人のためにどんな関わりをすればより良く生きられるかを考える現場で、なぜ津軽弁を話さないのかとの理論や根拠を欲しているだろうか。専門のトリビア的な面白さとして読んだ。2021/01/29
アナーキー靴下
73
タイトルまま、な本で、とても興味深く面白く読めた。文章や話の持っていきかたが丁寧で、データもふんだんに載せてくれている。実例としてあげられているのは聞き取り調査が大半ながらも、意図、背景、状況等の説明が親切で、物足りなさはまったくない。ただ、奥さんとの夫婦喧嘩を掴みとしてもってくるところは「やる夫で学ぶ」みたいな、わかりやすくもあざとい印象を受けた。また「普通の人」の定義が前時代的というか、方言が通用するようなローカルな社会での忖度コミュニケーションぽいのも気になった。私の身近だと一般化できない例だなと。2021/06/14
ホークス
73
元本は2017年刊。自閉的傾向のある自閉スペクトラム症は脳の器質的な特性で、定型発達者とは発達の過程が違う。本書は「方言を話さない」彼らの特徴を研究し、脳と心で何が起こっているかに迫る。一般に言われる、「他者の意図を読み取る機能に弱さがある」とは具体的にどういう事かイメージしやすい。文章は易しいけど、手順をしっかり踏む所は研究報告に近い。気やすめも言わない。それが本書の誠実さ。会話の輪に入るのが苦手な私も含め、「傾向を持つ人」は3割ほどになるだろう。多くの人に読まれ、理解が進むと良いなと思う。2021/02/20