近代の虚妄―現代文明論序説

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近代の虚妄―現代文明論序説

  • 著者名:佐伯啓思【著】
  • 価格 ¥3,080(本体¥2,800)
  • 東洋経済新報社(2020/10発売)
  • ポイント 28pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784492223963

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内容説明

「ポピュリズム」「ニヒリズム」に象徴される近代の危機を乗り越えられる思想はあるのか。
「グローバリズム」と対峙するアフターコロナの価値観とはなにか。
西洋近代の限界を縦横無尽に論じ、日本思想の可能性を探る。
「当代随一の思想家」による「近代論」の集大成であり、「知の巨人」が新境地を開拓する主著。

トランプに象徴されるポピュリズム現象。
しかしこれは今に始まったことではない。すでに1930年代のナチス台頭から始まっていたことだ。
その原動力となったのは「ニヒリズム」。何も信じられない事態に絶望し、疲れきったため、その時々の状況に身を任せ、流れるように生きるという態度である。
これが後にユダヤ人大虐殺の「ホロコースト」につながっていった。
現在、先進各国を覆い尽くしているのも、こうした「近代の病」であるニヒリズムである。
近代のこのような虚妄≒ニヒリズムを乗り越えることは可能なのか。
その可能性として日本思想、とりわけ西田幾多郎「無の思想」などに象徴される京都学派に再び光を当てつつ、西洋近代思想と比較分析。
その現代的価値を問い直す。

目次

序論 新型コロナウイルスと現代文明
第1章 フェイクの時代の民主主義
第2章 「歴史の終わり」と「歴史の危機」
第3章 「西洋の没落」に始まる現代
第4章 ハイデガーの問いと西洋文化の帰結
第5章 「ニヒリズムの時代」としての近代
第6章 科学技術に翻弄される現代文明
第7章 暴走する「グローバル資本主義」
第8章 「無の思想」と西田哲学
終章 日本思想の可能性
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

74
ヨーロッパの近代主義をプラトンから始まる西洋形而上学の延長上に位置付けるハイデガーの考えを踏まえ、その到達点で直面するニヒリズムに対抗する「力への意志」が、ニーチェの「超人」とは非なるグローバル資本主義という歪な形で現れている現代を鋭く指摘する文明論である。西洋思想への対立軸として西田哲学に帰結する構成となっているが、「無の思想」が現代文明の課題をどう解決できるのかの具体的な提言を是非聞いてみたい。読み応えのあるいい本だが、それにしても、佐伯先生の思いが迸りすぎて、説明がクドくて圧倒され続けの一冊だった。2020/12/08

ふみあき

17
スティーブン・ピンカーの『21世紀の啓蒙』に真っ向から対立するような反近代の書。プラトンからニーチェに至る西洋形而上学の歴史と、その帰結としてのニヒリズムという近代のどん詰まりを、西田幾多郎と日本主義で突き抜けろ、みたいな話が延々語られるが、私の頭が悪すぎるのだろう、全然ピンと来なかった。オルテガ、シュペングラー、ヴァレリー、ホイジンガ、ハイデガー等の思想の解説は勉強になったけど。2021/12/17

かんがく

14
予想していたより扱う範囲は遥かに広く、タイトルの通り現代文明を対象としている。プラトン、ヘーゲル、ニーチェ、ハイデガーなどの思想を軸に、フェイクニュース、民主主義、科学技術、グローバル資本主義といった現代社会の諸問題を明らかにしていく。後半の西田哲学についてはやや駆け足の印象もあったが、西洋近代の思想についての理解はかなり深まった。2021/08/04

羊山羊

13
西洋的価値観の土台をプラトニズムと宗教に、最高到達点をニーチェのニヒリズムに据えて近代が自壊しつつあることを壮大な論理展開で以て証明することに挑戦する。近代が成熟するにつれて高まる西洋的価値観が反発する思想によって押しのけられ、「小児病化」し絶対的な価値が押しのけられてニヒリズムに至る。このニヒリズムからの昇華として著者は「無」に意味を見出す日本の西田哲学や無の思想に希望を託す。突飛ですがなかなかどうして面白かったです。2022/02/03

原玉幸子

11
「神は死んだ」のニーチェ、存在を問うたハイデガー、大衆の問題を指摘したオルテガ他の思想を体系的に紹介し、量子力学に至る科学の変遷、近年流行ったピケティを引用しながら経済学の無用さを説く、その網羅性から自身の教養の弱点分野が浮かび上がるとの構成の良さに知性を感じます。表題に関わるグローバル資本主義にくっ付いている価値観の「膠着状態」を、ニヒリズムとの用語や「価値の捏造」との表現で腐す一連の流れは良いのですが、終章で言及する日本人の哲学では可能性に触れているだけなので、一寸残念です。(◎2020年・冬)2020/12/19

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