内容説明
大手外食チェーンのオーナー社長・梅森大介は、築地の仲卸「桶増」社長から中古ビルを購入した。麻布の一等地だが裏通りに面し、飲食店は死屍累々の立地だった。そんな悪所を引き受けたのは、かつて銀行に騙され死を覚悟した梅森を、資金援助で救ってくれた社長の大恩に報いるため。とはいえ買ったからには、ここで商売を成功させたい。全社員にアイディアを募るが、しかし反応は皆無だった。次第に梅森の無謀を咎める声も出始めたそんな折、ビルを丸ごと貸してほしいという人物が現われ、梅森の夢もここまでかと思われたが……
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
341
過去作と主題は同じくしながら、少し視点を変えてみた感じ。問題に対して、フィクションとはいいつつ、説得力のある解決プランを提示してくるので、しらけず読める。わかりやすいヒールが登場すると、より爽快感を得られるのであろうが、今作では、本筋に関係ないところで裏稼業っぽい人が関わってくるくらいで、ハッキリした敵対関係者がいない。その分、やや牧歌的なのんびりした空気感がある。説得力のある解決プランと書いたが、そもそも”食”だけで観光客を地方に誘致する成功例が見当たらず、無理筋だろうな、という冷めた想いはどこかある。2020/08/02
starbro
257
楡 周平は、永年に渡って新作をコンスタントに読んでいる作家です。フード・ビジネス・チャレンジ小説、私の仕事に通ずることもあり、堪能しました。2019年だったら、現実にも十分通ずるストーリーですが、大変残念ながらコロナ禍の2020年では成立しません。 2020/08/04
utinopoti27
160
楡氏の経済ビジネス小説は、読んでいてただ面白いだけでなく、地方活性化に繋がるアイデアが盛り込まれれているところがいい。オーナーから創作料理店の出店相談を受け、困惑する金沢の老舗料亭の板前と、恩人を助けるために購入した麻布の商業ビルの活用法に悩む外食チェーン創業者社長。物語は、この二人の動きを中心に、マクロ視点に立った経営のあり方を掘り下げていく。効率や合理性だけでは語れない、夢を追求する熱い経営者がいてもいいじゃないか。着地がキレイに決まり過ぎた感はあるが、ファンとしては納得の一冊だ。2021/07/24
うののささら
117
今中国のせいで、たいへんな飲食業界の話。顧客と従業員の生活を大切にして、義理を重んじる良き時代、ステークホルダーとかいう言葉がはびこる前は人の温情にふれ恩義を感じ働いてきた。金が金をうむ家業が日本を壊したな。職人の道は知れば知るほど奥が深く極めるのは困難で、伝統にしがみついたらだめになる。たいへんな仕事であたまが下がります。日本の将来に役にたてばと挑戦し成長していくいい話でした。2020/12/09
ゆみねこ
106
寿司や和食のチェーン店の社長がかつてピンチを救ってくれた恩人に頼まれ買い取ったビル。麻布という一等地に有りながら飲食店には不向きで誰も出店しようとはせず。そのビルを核に事業の後継問題・地方再生を絡め人情社長の挑戦が描かれる。面白かったです!お薦め。2020/08/29
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