内容説明
母子二人暮らしのアパートで発見された、女性の変死体。亡くなっていたのは母親、そして殺してしまったのは、日々虐待を受けていた小学生の娘だった。事件以降、“人”が変わったような言動をとりはじめる少女。何かが、おかしい。原因は過度の精神負荷による、解離性同一性障害……多重人格のせいなのか。では――「私の中にいる」のは、誰? 『人間に向いてない』で注目の著者が、読者に突きつける社会の底。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
nobby
168
(結局あたしは、誰なんだ)母親を殺害した少女の心の叫びのまま一気に読まされる。寡黙な姿や壮絶な虐待の跡に向けられる周囲からの守護をよそに、人が変わったかの如く悪態をつき粗暴な言動を繰り返すのは何故なのか?序盤から匂わされる多重人格への懐疑から行き着いた事実は、荒唐無稽であるものの衝撃的!ただ、それが実際に何だったのか曖昧な点や、終盤が学術的な説明に終始したのは、物語を読むにあたっては少し残念…作中で〈ひつじ村の裁判〉として述べられる社会で生きる意味をはじめ、進化し過ぎた人間の難解で愚鈍な生き様をまた憂う…2020/11/29
mint☆
144
10歳の少女が自分を虐待していた母親を殺害。その後人格が変わってしまう。荒唐無稽な状況ともいえる虐待の連鎖の話なのだが、性善説を信じ平和ボケしている私には衝撃的な内容だった。虐待するくらいなら産まなきゃ良かったじゃんと外から断罪するのは容易い。『ひつじ村の裁判』の例えは解りやすかった。こういう考え方でいたい。加害者なのか被害者なのか。私の中にいるのは?彼女はこれから重い十字架を背負って生きていくんだろう。2020/11/27
とん大西
134
著者初読みです。表紙や帯からホラー、サイコのような内容が展開されるかと身構えましたが、意外と正統派。が、その筆致は限りなく重く深い。母親を殺してしまった少女のこれから。無限に広がる自己否定の闇が息苦しい。止まない負の連鎖が痛ましい。生きることそのものが罪を重ねることでもあり、また贖罪でもある。親愛、慕情、憎悪-心懊でないまぜとなり、容赦なく抉られる感情。…萌果の明日はどうなる。2020/12/01
モルク
129
虐待を受けて育った10才の萠果が母を殺すというショッキングな事件。萠果は児童自立支援施設へ。そこで更正を目指すはずが人が変わったように問題行動ばかり起こす。そして…。解離性同一障害なのか。望まぬ妊娠、欲しくなかった子供、虐待されて育った子は自分もまた虐待しやすいという連鎖。さらに国の制度の問題にまでも及んでくる。施設の寮長の「ひつじ村の裁判」の話が印象的。結末は一つではなく正解などはない。被害者加害者それぞれの立場での思惑、自分は何を選ぶだろう。重いテーマの話だった。2021/03/08
fwhd8325
128
前作もショッキングな作品でしたが、この作品も強烈です。私には少々重く感じました。それでも虐待の連鎖をこういう切り口で描く作家の力は見事だと思います。私の中にいるとはなかなか怖いテーマです。きっと、私自身に中にもいるのだと思います。怖い。2021/02/22
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