内容説明
天明六年、来るべき皆既日蝕を背景に起きた、男と女の残酷物語。暗黒の極限、無惨な生死を描いた、渾身の時代小説集。女は軽井沢宿で飯盛女をしていたが、江戸に逃れて夜鷹となり、唐瘡に罹ってしまう(「千代」)。歌舞伎の戯者になることを希う男児は、京から下り、希望とは裏腹に江戸の陰間茶屋で育てられることに(「吉弥」)。濡れ衣の人殺しで入牢した男は覚悟の準備をしていたが、そこで地獄の光景を目にし、自らも責問を受ける(「次二」)他、鬼気迫る五つの暗黒物語。
目次
千代
吉弥
長十郎
登勢
次二
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
新田新一
40
江戸の天明6年に起こった皆既日食が起こった頃に地を這いつくばるようにして生きていた人々の物語。夜鷹、陰間、浪人と言った人々が登場します。救いがなくて、胸が悪くなるような描写が続くので、人様にはまったくお勧めできない本です。怖いもの見たさと異様な迫力に引きずられて読みました。最後の「次二」が一番重たくて、江戸時代の牢獄の凄まじい拷問と飢饉の悲惨さが、心に深く食い込んできます。小説ですが、こんな風に生きてぼろ布のように死んでいった人たちは無数にいるはず。彼らの無念の思いを少しでも受け止めたいと思いました。2025/05/03
taku
14
毒を求めたなら覚悟せよ。やってくれるぜ、まんげつぅ。時は江戸時代。残酷な昔話では読み取りが足りてない。いつの世も光差す道の陰は暗く、餓鬼道、畜生道、地獄道から這い出せず藻掻き苦しむ者がいる。救われず暗闇に飲み込まれていく者を、花村萬月はきっと愛情を持って見つめている。皆既日食の空に黒い瞳となって浮かぶ月が見届けたように。汚醜がなく、血汗垢尿糞の臭いを発することもない人形の物語なんかじゃない。作者自ら真の暗黒小説と称する会心作。装画に絵金は読んで納得。2020/12/06
fseigojp
8
胸糞度マックスとの評判のラストは伝馬牢でしたが、白土三平の『カムイ伝』(1960年代に大学近くの喫茶に全巻あった)で体験ずみでした2026/01/01
ウメ
5
江戸の時代、底辺に生きる人々の絶望。これ以上の絶望はないと思えた絶望のさらなる深奥をこれでもかとえぐる。もうなにも持たない彼らの命の燃え尽きる瞬間を日食の暗闇が塗り潰す。一切の光を失った漆黒だけが残る。傑作。2022/02/19
とろろ
5
久しぶりの読書。 絵金の表紙と帯の「この本を読む者は一切の希望を捨てよ」の言葉で怖いもの見たさで購入した。 まさに救いのない話だった。天明の時代、それぞれ苦痛に満ちた人生を生きてきた男女が日蝕とともに死んでいく連作だった。ほのかに光が見えそうになってもあっという間に暗黒の絶望に塗り込められていく絶望感。肉体が破壊される描写も凄まじかった。 とにかくグロテスクで陰惨な話ばかりだったが、するすると引き込まれて読了した。2021/08/07
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