内容説明
書きのこされた「歴史」は、現実に営まれた事実としての「歴史」とイコールではない。神から人へと直線的な時間で編まれた日本書紀と、神がみと人間の時間が併存する古事記。天皇の婚姻系譜における父系と母系。クーデターの正統性と敗者への視点……。過ぎ去った時間を手中におさめたい意志が歴史を編集する。神話と歴史をともに表現行為ととらえ、古代の世界観を検討する。
ベストセラー『口語訳 古事記』を生み出すことになる、通説への疑義と考察に満ちた一冊を大幅にアップデートして文庫化!
目次
第一部 歴史叙述の方法
第一章 『日本書』から日本書紀へ:史書の構想と挫折
第二章 日本書紀の歴史叙述
第三章 古事記の歴史叙述
第四章 母系残照:古事記・日本書紀の婚姻系譜
第五章 天皇の役割:夢見と呪性
第二部 歴史としての起源神話
第一章 起源としての笑い
第二章 イケニヘ譚の発生:農耕の起源
第三章 青人草:人間の誕生と死の起源
第四章 交わる人と神:境界としての〈坂〉
第五章 起源としての生産・労働・交易
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
わたなべよしお
16
前半に置かれている古事記と日本書紀の話は悪くはないが、三浦先生の別の本を読んだ方が良いと思う。むしろ、「笑い」や「イケニエ(生贄)」に関する考察の方が断然、面白い。個人的にはイケニエ譚とその後に語られる稲作、日本人にとって稲作がいかなるものであったのか、について語られることはまさに卓見。ハッとさせられる内容で思わず納得してしまった。2022/05/06
kungyangyi
0
細かいが、なかなか面白い。/古事記と日本書紀の違いを、メディアとしての観点から考察している、冒頭の数章が面白い。後半の記紀神話の象徴分析(?、あるいは構造分析?)は、よくある分析でそれほど面白くない。2021/07/19