内容説明
今から三十年以上前、小学校帰りに通った喫茶店。店の隅にはコーヒー豆の大樽があり、そこがわたしの特等席だった。常連客は、樽に座るわたしに「タタン」とあだ名を付けた老小説家、歌舞伎役者の卵、謎の生物学者に無口な学生とクセ者揃い。学校が苦手で友達もいなかった少女時代、大人に混ざって聞いた話には沢山の“本当”と“ ”があって……懐かしさと温かな驚きに包まれる喫茶店物語。(解説・平松洋子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
546
9つの作品からなる連作短篇集。作家が自身の小学校低学年の頃を回想するという形式を取る。お話の内容からすると1970年代のようだ。ご自分の体験のようでもあり、それは単なる物語の核で、想像力の産物であるようにも見える。私は多分に体験的回想なのではないかと考えている。なにしろ「小説家には一つだけ、聞かれても答えなくていい質問がある」そうだから。いずれにしても珠玉の9篇といってよい。いずれも甲乙つけがたいが、しいて言えば「ぱっと消えてぴっと入る」か。また「バヤイの孤独」の安部公房風の明るいシュールな味わいも絶妙。2021/12/25
mae.dat
260
ダジャレですもんね。スイーツですもんね。軽い気持ちで読めると思ったのですけど、文學の奴でした(儂調べ)。9章からなる連作短編。私がタタンと呼ばれた子供時代の回想の話でね、まるで京子さんの思い出話の様なの。でもね、その中で話される事は、相手にする人達の空想と言うか、思い込みみたいなものでね。創作を創作でラッピングし、事実の横に置いて、平静を装っている様なの。でね、小説家には答えなくていい質問があるんですってよ。この樽のある喫茶店(名前知らず)と言う小空間は、幻想劇を愉しめる人だけの劇場で御座います。2022/07/14
しんごろ
188
三十年以上前、小学校帰りに通った喫茶店。コーヒーの大樽を特等席として、老小説家にタタンと呼ばれる。その喫茶店での思い出話。老小説家の他に、個性的というか、曲者揃いの常連客の大人達がやることや会話が、子供のタタンの視線から見れば、驚きや新鮮で魅力的だったのかな。記憶が確かではないとはいえ、その経験値がタタンを物書きにしたのかもしれない。常連客の話も良かったけど、祖母の話がとくに良かった。物語をとおしてのタタンの成長も微笑ましかった。2026/08/19
ひさか
188
2018年2月新潮社刊。2020年9月新潮文庫化。9つの連作短編。登校拒否の小学生少女が、喫茶店の樽に潜り込むことで居場所を見つけ、店の常連たちにタタンと呼ばれながら、数年を過ごした夢のような記憶のストーリー。タイトルが面白くて、「なんだこれは」と手に取りました。小さな子視点の不思議な世界観が、面白く、楽しめます。佐藤香苗さんの表紙絵も楽しいです。2020/11/05
あきぽん
141
私が通っている喫茶店にも女子小学生の常連がいて、本書とは昭和と令和という違いはあれど、彼女の目には私たちおじさんおばさんはどういう風に映っているのか気になるところです。大人もファンタジーと現実をないまぜにして生きているんだよ。2023/11/10
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