内容説明
遺された手帳には、私の知らなかった父がいた――。娘が綴る、父が「藤沢周平」になるまでの軌跡
藤沢周平・没後20年の年(2017年)に、遺された手帳・大学ノートを愛娘が読み解き、知られざる父の姿を綴った本書は、単行本刊行時、大きな話題となった。
展子誕生後まもなく、妻・悦子が病死。新たな人生を歩もうとした矢先の、藤沢の悲痛な感懐が胸をうつ。その当時から小説の情熱やみがたく、執筆、投稿生活を送っていたのだが、「作家・藤沢周平」は夫婦の夢でもあったのだ。
妻を亡くした絶望のなかから、藤沢周平はいかに創作へ向かおうとしたのか。幼い娘を育てながら会社員生活を送り、再婚、オール讀物新人賞受賞、いよいよ小説家への一筋の光が見えてくる。直木賞受賞までの煩悶、自身の作品・生活に対する厳しい自己批評……。
娘だけでなく、これまで誰も知らなかった「作家・藤沢周平」の姿がある。文庫化にあたり、貴重な写真を数点追加。
解説・後藤正治「藤沢周平の源流」
※この電子書籍は2017年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
39
藤沢周平の一人娘が、遺された手帳(日記)から亡き父の心情を振り返る。淡々としながらも本音がにじむ文章から先妻を亡くしたときの深い哀しみや、専門誌記者と作家の二足のわらじの苦労ぶりがわかる。「小説は私という兵士が口ずさむ軍歌のようなもの。メロディがやや悲惨味を帯びるのはやむを得ない」「美文は鼻につくとどうしようも無いほど嫌みなものだ。徹底して美文を削り落とそう」‥‥本人は直木賞の「暗殺の年輪」よりも「又蔵の火」の方が出来が良いと思っていたこと、晩年、自律神経失調症を患っていたことなど初めて聞く話も多かった。2020/10/12
tomoka
12
文庫「暗殺の年輪」をそばに置き、時々読み返しながら読了。私と同世代の展子さん、昭和40年代の日常を思い出して懐かしくほっこりしました。2021/06/11
miruko
3
「いつも書くことでしか解るしかないのだ。考えてうまくいかないときは、書くことでしかみつけるしかない。(中略)父が残したものの中に、同じ書き出しで途中まで書いてはやめている草稿がたくさんあったのは、父の小説の書き方が、とにかく書いて、書いてわかるまで書く方法だったからだと、やっと私も理解出来ました」(p143)まだ若い頃の妻の死、慣れない子育て、サラリーマンと物書きの二足のわらじ。藤沢周平はこんなに苦労した人だったんだ。父への愛情がそれとなく読み取れる、温かみある文章がまた良い。2022/12/01
あんPAPA
2
藤沢周平の暗い一面が残された手帳に記されていた。幼子を残し若くして旅立った妻と云うだけで現在の海老蔵と似たような状況だなと感じた。そこでどうやって人生を立て直していくのかだが、やはり年月の経過と後添えを貰う事、意義を認める仕事が得られる事が大事なのだと良く判った。2021/08/26
なおしょうたつ
1
最初の奥様が亡くなったところは涙が出た。2021/10/17
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