筑摩選書<br> アジア主義全史

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筑摩選書
アジア主義全史

  • 著者名:嵯峨隆【著】
  • 価格 ¥1,595(本体¥1,450)
  • 筑摩書房(2020/09発売)
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  • ISBN:9784480016997

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内容説明

江戸中期~明治期日本に起源を持つアジア主義は、中国などアジア諸国と連帯して西洋列強に抵抗し、アジア解放を目指すものだった。それは1930年代以降の日本のアジア侵略に名目を与えてしまった。だが大東亜共栄圏の思想は興亜論に形を借りた脱亜論であり、決してアジア主義ではない。戦前の中国のアジア主義や、現代日本の「東アジア共同体論」などに形を変えた左右両極のアジア主義的言説にも注目。真のアジア共生への道を探るべくアジア主義の全貌を描き、その再評価を試みる。

目次

はじめに
アジアへの視座
アジア主義とは何か
第一章 アジア主義の源流
日本人にとってのアジア
近代アジア論の原型
欧米とアジアへの対処の仕方
西郷隆盛の位置づけ
第二章 初期のアジア連帯思想と行動
1 アジア連帯運動の開始
興亜会の成立
玄洋社の成立──民権と国権
金玉均支援運動──樽井藤吉と頭山満
2 論壇におけるアジア主義言説の展開
「主義」としてのアジア
アジア・モンロー主義
日露戦争後のアジア論
第一次世界大戦時期のアジア主義
今井嘉幸と浮田和民について
3 樽井藤吉と『大東合邦論』
日朝合同の原理
中国に対する見方
宗藩関係という問題
中国における『大東合邦論』
韓国併合に向けて
4 近衞篤麿と清末の中国
近衞篤麿のアジア認識
戊戌政変後の近衞篤麿
中国政治への対応
第三章 中国革命の支援者たち
1 頭山満の皇アジア主義
天皇道とアジア
皇アジアから皇世界へ
辛亥革命と頭山満
革命失敗の中での孫文支援活動
中国のナショナリズムへの姿勢
孫文との会談──交錯する思惑
2 宮崎滔天とアジア革命
支那革命主義
中国革命運動と宮崎滔天
革命運動の挫折と思想的転換
アジア主義の再構築と離脱
人種的差別撤廃についての姿勢
悲観の中のアジア主義
最終的な理想社会
3 北一輝と中国革命
アジア主義の萌芽
中国革命運動への関与
北一輝と宋教仁
中華民国の成立の中で
中華民国の革命的再生に向けて
戦闘的なアジア主義へ
第四章 中国人によるアジア主義の主張
1 初期の孫文とアジア
清末の孫文とアジア
アジア主義への言及
「中国の存亡問題」とアジア主義
日中提携論の持続
2 亜洲和親会について
在日アジア人の期待と失望
亜洲和親会の成立
亜洲和親会の開催と参加者問題
劉師培の「亜洲現勢論」について
アジア解放とアナキズム革命、そして日本批判
3 李大釗の「新アジア主義」
アジア主義の批判者として
アジア主義の模索
「新アジア主義」の提示
「再び新アジア主義を論ず」
アジア主義を越えて
4 孫文の「大アジア主義」講演について
一九二〇年代における対日観
李烈鈞の日本派遣
孫文、最後の日本訪問
孫文の日本到着とマスコミの反応
「大アジア主義」講演
日本批判は本意であったのか
講演に対する評価
第五章 日中戦争とアジア主義
1 満洲事変と日本型アジア主義の新たな展開
アジア・モンロー主義の再燃
大亜細亜協会の成立とその思想
三民主義批判と王道主義の主張
中国における大亜細亜協会
中国アジア主義の民族主義化
胡漢民の抗日的アジア主義
松井石根と胡漢民
2 東亜新秩序と東亜協同体論
近衞声明と東亜新秩序
訒山政道の東亜協同体論
三木清の文化的協同体論
尾崎秀実の東亜新秩序論
3 汪精衛の日中提携論と大アジア主義
日中提携の理論的正当化
汪精衛と大アジア主義
三民主義とアジア主義
「大東亜戦争」と大アジア主義
4 東亜聯盟の思想と運動
東亜聯盟論の概要
東亜聯盟の基本思想
繆斌と中国の東亜聯盟運動
汪精衛政権の下での東亜聯盟運動
東亜聯盟中国総会の結成とその後
実践活動と運動の衰退
第六章 戦後七五年のアジア主義
アジア主義者たちの戦後──松井石根と石原莞爾
戦後におけるアジアの位置づけ
多様化するアジア主義
これからのアジア主義
あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

かんがく

14
会沢正志斎から近衛篤麿、頭山満、宮崎滔天、北一輝、孫文、石原莞爾、汪兆銘、岸信介、竹内好などを経て、中村哲までを「アジア主義」を軸に書き切った力作。「連帯」は「指導」を招き、「解放」は「侵略」をもたらす。欧米帝国主義に対抗しながらも植民地を有し、ヨーロッパでもアジアでもない矛盾した立場に置かれた近代日本。近年、中国の台頭などを受けてアジア主義研究が進んでいるため、教科書への記述もそろそろかなと思う。2020/08/26

spanasu

3
「アジア主義」を軸に代表的な日中の論者の思想をさらっており、中国のために日中親善の大アジア主義を利用する孫文などが描かれる。アジア主義の教科書のような本ではあるが、当時の言説空間が日中に広がっていた以上、中国研究者によるアジア主義研究も当然必要となるのであり、その意味で中国側のアジア主義への対応が興味深い。2020/09/02

田九七

1
人物とその思想を中心に「アジア主義」の歴史を紹介していただきました。「連合」を語る「アジア主義」は、結局自国中心主義を超越しがたい存在でした。素人として勉強になりました。2022/01/26

森中信彦

0
日本のアジア主義、対外関係を丹念に追っているので貴重な資料となる本だ。宮台真司の『亜細亜主義の顛末に学べ』を読む際の参考になる。2021/01/22

NAGISAN

0
久々に「アジア主義」という言葉に出会った。孫文の大アジア主義(東洋の王道と西洋の覇道)。近衛篤麿、尾崎秀美、孫文、宮崎滔天・・・の息吹が感じられ、日中双方の参考文献が豊富であり、歴史書であるとともに、東洋文化と西洋文化の衝突の中での今後の日本の立ち位置を考える上で一読に値する。2021/01/13

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