内容説明
江戸中期~明治期日本に起源を持つアジア主義は、中国などアジア諸国と連帯して西洋列強に抵抗し、アジア解放を目指すものだった。それは1930年代以降の日本のアジア侵略に名目を与えてしまった。だが大東亜共栄圏の思想は興亜論に形を借りた脱亜論であり、決してアジア主義ではない。戦前の中国のアジア主義や、現代日本の「東アジア共同体論」などに形を変えた左右両極のアジア主義的言説にも注目。真のアジア共生への道を探るべくアジア主義の全貌を描き、その再評価を試みる。
目次
はじめに
アジアへの視座
アジア主義とは何か
第一章 アジア主義の源流
日本人にとってのアジア
近代アジア論の原型
欧米とアジアへの対処の仕方
西郷隆盛の位置づけ
第二章 初期のアジア連帯思想と行動
1 アジア連帯運動の開始
興亜会の成立
玄洋社の成立──民権と国権
金玉均支援運動──樽井藤吉と頭山満
2 論壇におけるアジア主義言説の展開
「主義」としてのアジア
アジア・モンロー主義
日露戦争後のアジア論
第一次世界大戦時期のアジア主義
今井嘉幸と浮田和民について
3 樽井藤吉と『大東合邦論』
日朝合同の原理
中国に対する見方
宗藩関係という問題
中国における『大東合邦論』
韓国併合に向けて
4 近衞篤麿と清末の中国
近衞篤麿のアジア認識
戊戌政変後の近衞篤麿
中国政治への対応
第三章 中国革命の支援者たち
1 頭山満の皇アジア主義
天皇道とアジア
皇アジアから皇世界へ
辛亥革命と頭山満
革命失敗の中での孫文支援活動
中国のナショナリズムへの姿勢
孫文との会談──交錯する思惑
2 宮崎滔天とアジア革命
支那革命主義
中国革命運動と宮崎滔天
革命運動の挫折と思想的転換
アジア主義の再構築と離脱
人種的差別撤廃についての姿勢
悲観の中のアジア主義
最終的な理想社会
3 北一輝と中国革命
アジア主義の萌芽
中国革命運動への関与
北一輝と宋教仁
中華民国の成立の中で
中華民国の革命的再生に向けて
戦闘的なアジア主義へ
第四章 中国人によるアジア主義の主張
1 初期の孫文とアジア
清末の孫文とアジア
アジア主義への言及
「中国の存亡問題」とアジア主義
日中提携論の持続
2 亜洲和親会について
在日アジア人の期待と失望
亜洲和親会の成立
亜洲和親会の開催と参加者問題
劉師培の「亜洲現勢論」について
アジア解放とアナキズム革命、そして日本批判
3 李大釗の「新アジア主義」
アジア主義の批判者として
アジア主義の模索
「新アジア主義」の提示
「再び新アジア主義を論ず」
アジア主義を越えて
4 孫文の「大アジア主義」講演について
一九二〇年代における対日観
李烈鈞の日本派遣
孫文、最後の日本訪問
孫文の日本到着とマスコミの反応
「大アジア主義」講演
日本批判は本意であったのか
講演に対する評価
第五章 日中戦争とアジア主義
1 満洲事変と日本型アジア主義の新たな展開
アジア・モンロー主義の再燃
大亜細亜協会の成立とその思想
三民主義批判と王道主義の主張
中国における大亜細亜協会
中国アジア主義の民族主義化
胡漢民の抗日的アジア主義
松井石根と胡漢民
2 東亜新秩序と東亜協同体論
近衞声明と東亜新秩序
訒山政道の東亜協同体論
三木清の文化的協同体論
尾崎秀実の東亜新秩序論
3 汪精衛の日中提携論と大アジア主義
日中提携の理論的正当化
汪精衛と大アジア主義
三民主義とアジア主義
「大東亜戦争」と大アジア主義
4 東亜聯盟の思想と運動
東亜聯盟論の概要
東亜聯盟の基本思想
繆斌と中国の東亜聯盟運動
汪精衛政権の下での東亜聯盟運動
東亜聯盟中国総会の結成とその後
実践活動と運動の衰退
第六章 戦後七五年のアジア主義
アジア主義者たちの戦後──松井石根と石原莞爾
戦後におけるアジアの位置づけ
多様化するアジア主義
これからのアジア主義
あとがき
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんがく
spanasu
田九七
森中信彦
NAGISAN