内容説明
『テロの文学史』で現代文学のエッジな領域を渉猟した著者が、さらなる衝撃の追尋を開始する。桐野夏生、中村文則、平野啓一郎、西加奈子、吉田修一、村上春樹……。<悪>に魅入られたかのように次々と生み出される現代日本の小説群は、解読されることを欲している。エンタメ/純文学というジャンルを超えて、共振するエクリチュールは、谷崎潤一郎、三島由紀夫、金子光晴、ロラン・バルトといった作家を巻き込み、カルト、ジェンダー、ホラー、幽体、笑いなどのテーマを呼び寄せる。文学を読み、考える「楽しみ」を拡張する意欲作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TAKA0726
12
桐野夏生、村上春樹、平野啓一郎、西加奈子、中村文明、吉田修一、自身今一つ彼らの良さがわからず何とか近づきたく本書を手に取る。村上は現代日本語に驚くべき変化を与え現代人の現実の会話を変えた。桐野はノンジャンルというジャンルなきジャンルを開拓、エンタメと純文の壁を壊す。OUTやダークでは自死する人の死線を彷徨いながらサバイブし、魂萌え!では吉田と共通のざらざら荒れた音楽性の転調するリズムの心地よさがある。カルト、ジェンダー、ホラーでは西、吉田、中村の繋がりは深い。主題は「幽体」、読んでも今一よくわからない。2020/11/08
田中峰和
5
桐野夏生の作品はここで紹介されたものは半数以上読んでいるが、「OUT」が特に印象に残る。普通の主婦と猟奇的な死体解体が結び付く異常な展開、この作品で一気に彼女のファンになった。カルト、ジェンダー、ホラーは、平野啓一郎、西加奈子、中村文則、吉田修一の作品において、相互に深いつながりを有することが、何度も彼らの作品を通して語られる。興味深いのは西加奈子の刺青への拘り。ほとんどの作品で刺青に何らかの言及がなされているのが意外だ。所々に、村上春樹、三島由紀夫など今や古典的ともなった作家との対比もあって楽しめた。2021/02/15
Nick Carraway
0
評論というものの自由自在さを堪能できる一冊。「類縁」「因縁」「共通点」などの言葉で、桐野を軸に、中村文則、平野啓一郎、金子光晴、西加奈子、吉田修一、ロラン・バルト、村上春樹……と次から次に連想で論を繋いでいく。その跳び方は恣意的であるが、そんなの関係ねえ。語ることが楽しく、読む者がおもしろく感じられれば。現代評論の最先端であり、近代評論の現時点での到達点かも。テクストを楽しむというのはこういうことだ。読者がついてこれなかろうが、フランス語を多用しようが、外国文学の知識をひけらかそうが、そんなの関係ねえ!2020/12/07
鴨ねぎ
0
桐野夏生、平野啓一郎、西加奈子等の著者の作品の関連の解説本とでも言えばいいんでしょうか、桐野夏生さんの「ハピネス」「OUT 」は読んだと思うけど、作家は沢山いらっしゃるので本の関係性は考えた事はないです。 フィクションは楽しめればよいという感じなので、マニアックな本なのかねぇ? 一部で気になる書籍もありますが、今は沢山の本が待っているので気になっても読めないです。2020/10/23