内容説明
ホリーは、いたって普通の女の子。サイキックな能力を持つことを除けば――。舞台は、15歳の家出少女だった1984年のイングランドからイラク、アメリカ、ディストピアと化した2043年のアイルランドまで。ホリーの人生を中心に展開される6つの物語からなる大作。世界幻想文学大賞受賞、ブッカー賞ノミネート。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
211
世界幻想文学大賞受賞作にてブッカー賞候補作ということで読みました。デイヴィッド・ミッチェル、初読です。菊版、二段組、646頁完読しました。本書は、幻想文学というよりも、文化、歴史、宗教、死をカオスにしたような小説でした。1Q84のオマージュっぽい雰囲気があったり、谷崎潤一郎の『鍵』が登場するのは、著者が日本に住んだことがあったり、奥さんが日本人だったりするからなんでしょうね。 https://www.hayakawabooks.com/n/n2ec7d418c03a?gs=dc9e65a263462020/09/22
buchipanda3
109
これぞフィクションと言わんばかりの作品だと思った。かなりのボリュームだが、6つの物語がそれぞれググっと引き込むものを持っていてどんどん読ませる。文章も好みというかそそる。自在な文章が脳に気持ちよく流れ込んでくる。かっこつけな面とか音楽や文学の引用の遊び心とか。それがウィットに富んでいるとかじゃなくてシニカルな感じ。そこがいい。人間模様のドラマに唐突に挿まれる異空間、神話的なその味付けに気持ちが上がった。5章の世界は超え過ぎかもねえ。4章の作家篇が印象深い。全編を通してボーンクロックスによる物語を満喫した。2020/09/29
アキ
78
主人公が自分より数年年下なため、時代もホリー・サイクスにも親しみを感じる。1984年から2043年まで6章から構成されるが、テイストも場面も全く違う世界に登場人物が姿を変えて現れてくる。他の作品は読んでないが、同じ登場人物が複数の話に出てくるらしい。数多くの小説、詩、歌詞、絵画などからの引用、オマージュがあり、ブロンズィーノ「ヴィーナス、キューピッド、愚行の時」の黄金の林檎が目に浮かぶ。1984年は1Q84のオマージュだと思うが、2043年のディストピアぶりは考えさせられる。とてもスケールの大きなSF物語2020/09/22
ヘラジカ
78
貪るように読んだ。時代を超越し、多数の人生によって紡がれる壮大な物語は、作者の代表作にして傑作『クラウド・アトラス』に勝るとも劣らない。独立した糸がそれぞれの流れの中で絡み合って、一つの叙事詩が作り上げられていく様に、読んでいて脳内が痺れるほど興奮させられた。そしてこの大作すら「ミッチェル・ユニバース」を構成する作品一つでしかないという事実…。凄い。凄すぎる。この一作によってデイヴィッド・ミッチェルという作家が、自分の中では現代文学最高峰の一人として位置付けられた。スリップストリーム文学の傑作!2020/08/22
NAO
76
何度も生まれ変わることで不死の魂を維持している時計学者(ホロロジスト)と、異才を持つ者の魂を食い潰すことで不死の身を得ている隠者(アンコライト)。最終局面を向かえていた二者たちの間の戦争。もともと霊感が強かったホリーは、弟ともども、この戦争に巻き込まれていく。1984年から2015年まで。そこに描かれているイギリスは架空の世界で、70才になったホリーが孫と暮らす2015年のアイルランドは、中国の支配下にあるデストピアだ。ホロロジストたちの戦争と現実世界の関連性が、今一つよく分からなかった。2020/11/04
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