講談社文芸文庫<br> 暗い絵・顔の中の赤い月

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講談社文芸文庫
暗い絵・顔の中の赤い月

  • 著者名:野間宏【著】
  • 価格 ¥1,562(本体¥1,420)
  • 講談社(2020/08発売)
  • ポイント 14pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784062901079

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内容説明

新人・野間宏、戦後日本に颯爽と登場――初期作品6篇収録のオリジナル作品集
1946年、すべてを失い混乱の極みにある敗戦後の日本に、野間宏が「暗い絵」を携え衝撃的に登場――第一次戦後派として、その第一歩を記す。戦場で戦争を体験し、根本的に存在を揺さぶられた人間が、戦後の時間をいかに生きられるかを問う「顔の中の赤い月」。ほかに「残像」「崩解感覚」「第三十六号」「哀れな歓楽」を収録する、実験精神に満ちた初期短篇集。
――草もなく木もなく実りもなく吹きすさぶ雪風が荒涼として吹き過ぎる。はるか高い丘の辺りは雲にかくれた黒い日に焦げ、暗く輝く地平線をつけた大地のところどころに黒い漏斗形の穴がぽつりぽつりと開いている。その穴の口の辺りは生命の過度に充ちた唇のような光沢を放ち、堆い土饅頭の真中に開いているその穴が、繰り返される、鈍重で淫らな触感を待ち受けて、まるで軟体動物に属する生きもののように幾つも大地に口を開けている。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

❁Lei❁

19
表題作二篇のみ読了。社会主義運動に片足突っ込んでいた青春を描いた「暗い絵」。戦争で夫を亡くした未亡人への複雑な恋心を描いた「顔の中の赤い月」。戦後派の作品は暗い気持ちになるので好きになれないけれど、戦争というものが人に与えた苦しみを擬似体験できるので、やっぱり文学史的意義はあるよなあと思います。特に「顔〜」の主人公が、戦地に行ってようやく恋人からの愛情の尊さを知るシーンは、心にぐさっときました。死と隣り合わせになってからわかる日常のありがたさに、私も想いを馳せるなどしましたが、これで読み方あってるのかな。2024/07/12

Kazuo Tojo

8
戦争前後の男たちの出来事。暗く、常に死がつきまとう物語の短編の五作品。もしかして男とは、こういう人生を負わなければいけないのかとも思ってしまう。今の自分には時々、こういう作品を読まなければと思ってしまう。2018/12/23

ネムル

8
戦中・戦後のマルクス主義に傾倒した亜インテリな鼻持ちならなさが好きになれない。とりあえず、戦後の虚無主義に陥った精神史として読む。「顔の中の赤い月」は映画的でちょっと面白い。2018/07/27

ダージリン

6
野間宏は初めて読んだが、なかなか読むのに体力を要する作品だった。ただ、こういう重さのある文体は嫌いではない。ここに収められているのは作家として初期の作品であり、何となく肩肘張ったようなところも感じられるのだが、多少若書きというところがあるのだろうか。後期の作品と読み比べてみたい気がした。2018/03/04

Mark.jr

5
作者もそこに書かれている日本の時代も若い...。2024/04/19

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