内容説明
1991年のソ連崩壊後、ユーラシア大陸の中央に位置するカザフスタンは、独立国家の建設、計画経済から市場経済への移行という、大きな変化を潜り抜けてきた。その過程で、国のありかたや人びとの生活はどのような変化を遂げてきたのだろうか。
豊富な資源をもとに経済発展を続けるカザフスタンは、いまや新興国のなかでも優等生の一国に数えられる。
独立前からカザフ人のあいだにみられる特徴のひとつに「コネ」がある。そして、市場経済移行後に生活のなかに蔓延しているのが、このコネクションを活用して流れる「賄賂」である。経済発展がこれまでの人びとの関係性を変え、社会に大きなひずみが生じているのだ。
本書は、市場経済下、警察、教育、医療、ビジネス活動など、あらゆる側面に浸透している「賄賂」を切り口に現在のカザフスタンをみていく。賄賂は多かれ少なかれ世界中の国々でみられる現象だが、独立後のカザフスタンは、それが深刻な社会問題を生み出している典型的な国のひとつである。
ここから見えてくるのは、人びとの価値観の変容だけでなく、ほんとうの「豊かさ」を支える社会経済システムとはどのようなものかという問題だ。豊かさを追い求めた、この30年の軌跡。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Meme
15
読後の気持ち悪い感覚はなんでしょうか。いつ誰に何をどうやってお心付けするのか?は世界中で誰もが考えることだと思いますが、あまりに露骨、そして常識的な行為としてシステマティックに社会実装されているカザフスタン。自由と安定を基盤に国をつくる大変さも感じました。とにかく、教育と医療は公平、平等があって自由が成り立つのだと思いました。ところどころで日本人が出てくるのが、乙でした!2023/02/15
人生ゴルディアス
4
『コラプション』のほうが普遍的な話題で面白い。ところで、経済自由化による貧富の拡大や物事を金で解決する時流になじめずソビエト時代を懐かしむソビエト世代の心情に著者が賛意を示しているように見受けられる。これは狩猟採集民族は農耕民族に比べあまり働かずとも食っていけた、と同じ視野狭窄ではなかろうか。揺り籠から墓場までの制度を維持できる範囲で生きていける数の人間しか生き残れなかっただけなのでは。昔はカネなど必要なかった、も社会主義ではカネが社会の権利義務関係の代替物としてあまり重きを置かれていなかっただけでは。2019/11/26
お抹茶
3
驚く内容。まず,カザフスタンでは,免許も入試も判決も賄賂次第ということに驚いた。独立後の「カザフ化」政策は比較的穏健だったので,分離独立など政治的要求を背景とする暴力的な民族紛争は起こっていない。入学の便宜,全国統一試験の不正,卒業論文の購入もあり,緊急手術でも金銭が要求されることがある。加害者が無罪放免になる一方,冤罪が発生するなど,司法の公平性も賄賂や縁故で歪められている。ソ連時代もコネは当然だったが,賄賂は倫理的に恥ずかしいという意識があった。しかし,市場経済の強引な導入で贈収賄がひどくなった。2021/01/10
Meistersinger
3
ソ連崩壊によって経済活動が活発化したことで、昔はコネで済ませていたことに金が必要になったと。著者による調査が妨害を受けなかったらしいことは軽い驚き。2023/05/24
れいまん
3
友人から借りたもの。カザフスタン共和国のソ連解体後の変化が賄賂の面より語られている。 いやー、やっぱりというか、どう考えても、ソ連時代のほうが良い!資本主義は今や腐っているので社会主義の良い面を生かした国家経営ができないものかと考えてしまう! 民主主義も成熟するには時間がかかるしね! 2022/10/15
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