筑摩選書<br> 死と復活 ──「狂気の母」の図像から読むキリスト教

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筑摩選書
死と復活 ──「狂気の母」の図像から読むキリスト教

  • 著者名:池上英洋【著】
  • 価格 ¥1,815(本体¥1,650)
  • 筑摩書房(2020/07発売)
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  • ISBN:9784480015921

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内容説明

イタリア・フィレンツェ郊外の小さな美術館で出会った一つの謎めいた板絵。それは死んだはずの赤ん坊をよみがえらせた聖人の奇跡を描いたものだった。この「嬰児復活の奇跡」と、その上位テーマたる「狂気の母」が、著者を思索の旅に招き入れる。聖餐・聖遺物といったキリスト教文化圏特有の信仰形態や、遡って古代エジプト、ギリシア、ケルト文化にも見られる「死と復活」の主題。これら多くの図像や史料を読み解きながら西洋精神の根幹を成す「死と復活」の思想の本質と、キリスト教の深層に肉薄する。

目次

はじめに──生き返った赤ん坊
死んだ赤ん坊をよみがえらせる奇跡
第一章 「嬰児復活の奇跡」と聖遺物
「嬰児復活の奇跡」の図像
奇跡のエピソード──列聖審査のために
「post mortem」──死せる聖人の奇跡
遺体が保ち続ける力と「聖遺物」
巡礼と、病を癒す聖遺物
一神教における聖遺物の矛盾点
過熱する聖遺物崇敬
煉獄とは何か
煉獄と贖宥状をめぐる論争
盗まれる遺体
切り刻まれ、食べられる遺体
第二章 聖餐とカニバリズム
血を流す聖体
四福音書は「最後の晩餐」をどう記述したか
「Q文書」と四福音書
記述内容の違いから浮かび上がるもの
それはパンか、それとも肉か
死海文書とミサの原型
補強されていく聖変化
聖体解釈をめぐる論争
聖マルティヌスと聖フランチェスコ
「ボルセーナのミサ」と異端者たち
二人の宗教改革者を隔てるもの
カニバリズムの一形態としての聖餐
共同体の拒否反応
プロパガンダ図像としての「血を流す聖体」
第三章 聖杯伝説と生贄の祭儀
不死の薬としての聖体
アーサー王と聖杯伝説
アリマタヤのヨセフ、あるいは聖杯の守護者
不死をもたらす聖杯──キリストの犠牲的な死
エジプト神話にみる死と復活
ミトラ教にみる死と再生
過越の祭の生贄
初子の生贄としての「子殺し」
豊穣をもたらす聖体
第四章 子殺しの魔女とケルトの大釜
子殺しはどう描かれたか
産婆への嫌疑
子殺しの魔女
わが子を殺すメデイア
「再生のために煮る」メデイアと魔女
ケルト神話の「再生の大釜」
第五章 ディオニューソスと「洗礼による死」
酒の神ディオニューソス
冥界と結びつくディオニューソス
マイナデスによるバラバラ殺人
トランス状態と殺戮
生贄をバラバラにする収穫神
「Agnus Dei」と「命の泉」
生贄となる神自身
キリスト─オシリス─ディオニューソス
それは煮て、焼かねばならぬ
それはいったん水で死なねばならぬ
洗礼──異教徒としての死と再生
十字の切断痕
第六章 若返りの釜──グノーシス、錬金術、アンドロギュヌス
「聖杯の文化」の発展
「回春炉」の錬金術
錬金術とアンドロギュヌス
多神教と一神教の融合の試み──ルネサンス・ネオ・プラトニズム
ヘルメス文書と錬金術的「合一」
グノーシス主義とイエスの肉体
ルネサンス・ネオ・プラトニズムとアンドロギュヌス体
君主称揚図像としてのアンドロギュヌス体
レオナルド・ダ・ヴィンチとフォンテーヌブロー派
レオナルド〈洗礼者ヨハネ〉の両性具有性
不老不死となった王
おわりに──記憶としての図像

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ゆずこまめ

10
我が子を調理する母という衝撃的な場面。キリスト教以前の民間信仰が根強く残っているのは、キリスト教徒ではない私には面白い。2016/04/02

東雲

9
友人から借りて。絵画に描かれた我が子を殺す母と、赤子を復活させる聖人の奇跡。何故このような絵画が描かれたのか、聖餐とカニバリズム、グノーシス主義とキリスト教以前の民間信仰との関連について纏められている。聖書について詳細な説明があったが、後半に行くにつれて関連性が薄いような印象。でもこういった視点から書かれる文献はとても好き。「狂気の母」に描かれる煮るという行為と民間信仰における復活と洗礼の関係について、また聖餐に於けるワインと酒の神ディオニーソス、死との関連が興味深い。2016/02/22

遊未

8
「聖杯とケルトの大鍋」「聖餐とカニバリズム」そう考えてもいいよね?ということがあっさり述べられています。メデイアにディオニューソス。キリスト教はどこから?聖書は内容はどこから?ひと時代昔には考えられなかった(書きにくかった?)部分の研究が進んでいくことは楽しみです。いつの日にか「Q文書」が明らかになる日があるのでしょうか。2017/02/13

T.Y.

7
母親が我が子を殺して調理し、それを聖ヴィンチェンツォ・フェレールが蘇らせたという「嬰児復活の奇跡」の図像。それを皮切りとして論じられるカニバリズムの伝統と、キリストの血肉たるワインとパンを口にする聖餐との繋がり。そこからさらに聖杯伝説、ケルトの大釜、ディオニュソス信仰、グノーシスと錬金術等も結び付けて論じられる。浩瀚な研究だが、美術史を専門とする著者にしては個々の作品の分析は比較的少なく、どちらかというと思想史の書という印象が強い。2014/05/03

坂口衣美(エミ)

6
面白かった。「母はなぜわが子を殺したか」というショッキングな帯にヒトメボレ。聖人をもてなすために子供を真っ二つにして料理したというテーマの絵から語られるキリスト教のダークな側面。犯罪者や聖人の死体が霊的な力を持つとされ、それを護符として、あるいは薬として求めた人々がいたという。日本の即身仏も連想される。またミイラが漢方薬として使われていたこともつながるような。p276に書かれているように、こうしたテーマは人類に共通しているのだろう。2014/06/01

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