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内容説明
【『この世界の片隅に』片渕須直監督 推薦】東大教授×現役東大生のユニットが戦前から戦後の貴重な白黒写真約350枚を最新のAI技術と、当事者との対話や資料、SNSでの時代考証などをもとに人の手で彩色。戦前の平和な日常と忍び寄る不穏な影。真珠湾攻撃、硫黄島の戦い、沖縄戦、度重なる空襲、広島・長崎の原爆。そして終戦し、残ったのは破壊の跡と復興への光――。カラー化により当時の暮らしがふたたび息づく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばたやん@かみがた
120
1930年代半ばから戦争直後までの日本の家庭で撮られた写真を、AIの力も借りてカラー化して時系列に展示して行きます(戦局や時流を示すものは資料写真あり)。著者らはこの作業を「記憶の解凍」と呼んでますが、その言葉通り21世紀に生きる我々にもグッと身近な存在として写っている人物を感じられる様になります。写真提供者がご自分が幼い時のものを出していることもあり、特に戦争前のものは圧倒的に幼稚園児から小学生が中心に写っていることが多い。広島や大阪から提供されたものは、広告や商店街の模様など懐かしさを(1/n)2021/04/06
はるを
110
🌟🌟🌟🌟🌟。コレは新書大賞をあげたいくらいの傑作。新書で写真集なんてありそうでなかった。確かに戦争時代の写真は全てモノクロでそれがどこか他人事のような距離感を生んでいた事は解る。それが、カラーになっただけで途端に地続きになり現代まで繋がってくる効果が凄い。これほどハッキリ「写真を読む」経験は初めてかも知れない。皮肉にもよく出来過ぎていて毎日数ページ写真を読んだだけでキチンと憂鬱になる。本当文字通り日本列島は焦土と化した事がよく解る。戦争についてまず何から勉強しようかと思っている人には最適。2021/02/13
keroppi
87
白黒写真に色をつけていくことを「記憶の解凍」と読んでいる。AIだけでは出来ない着色を人の記憶によって呼び覚ますのだ。そして、着色された写真は、さらに人々の記憶を蘇らせる。それは、確かに生々しく、今生きている人のように。写真によっては、まだ途中段階と見えなくもないものもあるが、色とは、こんなに人の記憶と結びついているものなのだ。すでにその記憶を持った人も少なくなってきている。この本によってこの活動がさらに深められることを祈りたい。カラー化された原爆のキノコ雲は、オレンジ色だったのだ。2020/10/29
ばう
80
★★★★ AIが色付けした写真を人が手作業で色補正して蘇った戦前から戦後にかけての写真が収録されています。カラー化されると途端にその時の光、匂い、人々の声まで蘇ってくるようだから不思議。防毒マスクと鉄砲を身につけて戦争ごっこをする子供達の無邪気で楽しそうな笑顔に怖さを感じる。戦前の人々の穏やかな笑顔の写真と戦争で焼け野原となった町や虚な表情の兵士や市井の人々の写真の対比に胸が痛むけれど出来れば沢山の人に手に取ってもらいたい一冊。カラー化された事でより身近に戦争の事を考えられるかもしれないから。2021/02/04
kei-zu
79
「ウルトラQ」の総天然色版というのが過去に発売されたことがあって、入手した知人に「どう?」と聞いたら「悪くない。むしろ見やすいと言ってよいのでは」とのこと。 本書は、戦前から戦中、戦後の景色を鮮やかにする。著者によれば、着色された写真を見た方が当時の記憶をありありと思い出したという。 本書の写真はまた、読者の感情を揺さぶる。映画「この世界の片隅に」に描かれたように、広島の爆心地には人の暮らしがあったのだ。 本書の最後、焼け野原を前にした若い男女の姿に時代の「希望」を見る。それを伝えるのが私たちの使命だ。2021/06/24