講談社文芸文庫<br> うるわしき日々

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講談社文芸文庫
うるわしき日々

  • 著者名:小島信夫【著】
  • 価格 ¥1,562(本体¥1,420)
  • 講談社(2020/07発売)
  • ポイント 14pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784061982468

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内容説明

『抱擁家族』の30年後の姿 老いと家族をテーマの長篇――80を過ぎた老作家は、作者自身を思わせて、50過ぎの重度アルコール中毒の息子の世話に奮闘する。再婚の妻は、血のつながらぬ息子の看病に疲れて、健忘症になってしまう。作者は、転院のため新しい病院を探し歩く己れの日常を、時にユーモラスなまでの開かれた心で、読者に逐一説明をする。複雑な現代の家族と老いのテーマを、私小説を越えた自在の面白さで描く、『抱擁家族』の世界の30年後の姿。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

zumi

19
「三輪俊介は小島信夫にそっくりであるが、何といっても小島信夫そのものではない」虚構と史実の淡い往還、まさに晩年の大作にふさわしい、技巧の極北と、長きに渡るテーマの成熟があまりに凄い。まるでドストエフスキーの小説のように、幾重にも及ぶ、声が響き渡る。ただし、それは五線譜に音符が整然と並んだ音楽を奏でるわけではない。シャウトする渦も、最小の溜息も全てを飲み込みーー同時にこれまでの作品をテクスト内に取り込みーー放出するのだ。柔らかい石のような家に暮らす人々の語りの結晶。まったくもって見事、そして難解だ。2014/09/09

しゅん

17
重度のアル中で記憶を侵されている54歳の前の妻との息子がいて、血の繋がらない子の介護疲れからか健忘症をなってしまう今の妻。老小説家の「うるわしき日々」はこのような状況の中で続いていく。この小説が新聞の連載小説だったことは重要なことのように思う。その理由をうまく説明できなけれども、少しづつ微妙に進んでいく感覚が魅力的なグルーヴを作り上げているように思うからなんだと思う。2019/08/07

gogo

10
『抱擁家族』の30年後を描く。80歳を過ぎた主人公が極度のアル中患者となった息子の世話に奔走し、妻は健忘症になるなか、遠くない将来に訪れる自らの死も仄めかされ、物語は全くもってうるわしくない。また、作中突然戦時中のことや、雨漏りした家や、出征前夜子供を作ると決めた時の妻との会話など、過去がぶつ切れに登場する。そんな支離滅裂を回避しながら書かれる小説の方法は(相変わらず)前衛的だし、日本の高齢化社会の未来を活写する時代性と、人生のつらさを笑いに転化するユーモアも含まれる。また結末が素晴らしい。傑作。2015/11/22

真琴

9
『抱擁家族』から30年後。老作家と後妻は、アルコール中毒の息子の処遇に追われる。次第に、妻の記憶も曖昧になっていく。人の心身が崩壊していく様は怖く切ない。老いとはこういうことを受け入れていくことなのか?「コンビニの袋を右手に持ったまま、かがみ込んで泣いた。」この先数行は読むのが辛かった。2023/11/15

Yuki Ban

9
老人の長い話をひたすら聞かされている感じ。良い意味でも悪い意味でもない。含蓄のある言葉に引き込まれるが、よくよく聞いてみるとなんのことはないことを語っていたりする。アル中の息子、痴呆症の妻について、老いが進む作家の目線で描かれる物語のため、過去・現在・未来・現実・虚構・事実・感想があやふやに入り混じる。様々なエピソードの中でも、僕がとても面白いと思っている小説、村上春樹のねじまき鳥クロニクルについての所感が印象に残った。テーマは妻の失踪。老作家がどんな過程を経てどんな結論を出したかは忘れてしまった。2018/12/22

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