内容説明
『抱擁家族』の30年後の姿 老いと家族をテーマの長篇――80を過ぎた老作家は、作者自身を思わせて、50過ぎの重度アルコール中毒の息子の世話に奮闘する。再婚の妻は、血のつながらぬ息子の看病に疲れて、健忘症になってしまう。作者は、転院のため新しい病院を探し歩く己れの日常を、時にユーモラスなまでの開かれた心で、読者に逐一説明をする。複雑な現代の家族と老いのテーマを、私小説を越えた自在の面白さで描く、『抱擁家族』の世界の30年後の姿。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
zumi
20
「三輪俊介は小島信夫にそっくりであるが、何といっても小島信夫そのものではない」虚構と史実の淡い往還、まさに晩年の大作にふさわしい、技巧の極北と、長きに渡るテーマの成熟があまりに凄い。まるでドストエフスキーの小説のように、幾重にも及ぶ、声が響き渡る。ただし、それは五線譜に音符が整然と並んだ音楽を奏でるわけではない。シャウトする渦も、最小の溜息も全てを飲み込みーー同時にこれまでの作品をテクスト内に取り込みーー放出するのだ。柔らかい石のような家に暮らす人々の語りの結晶。まったくもって見事、そして難解だ。2014/09/09
しゅん
18
重度のアル中で記憶を侵されている54歳の前の妻との息子がいて、血の繋がらない子の介護疲れからか健忘症をなってしまう今の妻。老小説家の「うるわしき日々」はこのような状況の中で続いていく。この小説が新聞の連載小説だったことは重要なことのように思う。その理由をうまく説明できなけれども、少しづつ微妙に進んでいく感覚が魅力的なグルーヴを作り上げているように思うからなんだと思う。2019/08/07
練りようかん
13
『抱擁家族』の30年後という紹介文に惹かれた。長年住んだ家の間取りが全く浮かばないと妻が言う。彼女は再婚相手で、家から入るのがらしいなと思うのと、またもや居ありて実の喪失を描くのかなと期待が膨らんだ。なんと、あの長男が戻ってくるのである。離婚し財産を失いアルコール依存で脳にも影響が。ありがとうなんて絶対言わない継子を妻は介護して疲弊。もし自分が先に死んでしまったらと危惧する主人公は80過ぎ、妻は70手前で息子は55歳。これも「8050問題」ではと興味深く、喜悲劇の手触りとあの家の設計士の詫び状が良かった。2025/12/16
真琴
10
『抱擁家族』から30年後。老作家と後妻は、アルコール中毒の息子の処遇に追われる。次第に、妻の記憶も曖昧になっていく。人の心身が崩壊していく様は怖く切ない。老いとはこういうことを受け入れていくことなのか?「コンビニの袋を右手に持ったまま、かがみ込んで泣いた。」この先数行は読むのが辛かった。2023/11/15
ぷるいち
10
徹頭徹尾に不安定な小説だ。喜劇的な悲劇とも言える、私小説とも言える。しかし、それらの表現の固着を、この小説は拒むだろう。名状しがたさと違和感が、無視することもできたのに、読んでいる最中ずっと引っかかっていた。思うに、言語というより、現実の知覚経験のレベルで、作者は我々と異なるのかもしれない。この人は現実を全く信用していなかったのではないか。その信用できない現実のため、すぐに頭を下げる、ピエロのような人格を持つに至ったのではないか。その視点から見る現実は恐らく何一つ安定していないのじゃないか。そう思えた。2018/02/25
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