新潮文庫<br> 老人と海(新潮文庫)

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新潮文庫
老人と海(新潮文庫)

  • ISBN:9784102100189

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内容説明

八十四日間の不漁に見舞われた老漁師は、自らを慕う少年に見送られ、ひとり小舟で海へ出た。やがてその釣綱に、大物の手応えが。見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げた老人に、海はさらなる試練を課すのだが――。自然の脅威と峻厳さに翻弄されながらも、決して屈することのない人間の精神を円熟の筆で描き切る。著者にノーベル文学賞をもたらした文学的到達点にして、永遠の傑作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

こーた

275
福田恆存訳で数年前に読んだが、新訳であらためて。黙々と魚と格闘する描写ばかりがつづくとおもったら、ずいぶんと印象がちがう。老人、こんなに独りぶつくさと、それも野球(というかディマジオ)の話をしてるんだっけ。相対する魚は獲物であり敵であり、またときには友情にも似た親しみをかんじる仲間であり、サメに襲わて守るべき存在となり、食い尽くされた暁には観念としての魚だけが残る。くっついたり離れたり、顕れたかとおもうと、やっぱりただの魚だったり。三島由紀夫『金閣寺』における金閣と、どこかつうじるものをかんじた。2021/08/04

美紀ちゃん

215
すごい戦いだった。見たこともない大きな魚をたった1人で長い時間をかけて釣り上げるその描写が、すごい。ジリジリと我慢くらべのような時間が流れて、いっ時も気を許さずに、ずっとロープに力をこめている老人。すごい耐久力勝負。読み手のこちらも、力が入ってしまい息切れしそうだった。大きな魚を釣り上げてからも試練は続く。その血の匂いを嗅ぎつけ集まってくるサメとの戦い。経験値の高さ、前向きな考え方など、老人を尊敬する。いやぁ、私にも力が入ってしまい、なんだこの読書体験は!と、本当に驚いた。疲労感ハンパない。さすが名作。2023/05/13

やいっち

158
自らのフィッシング体験を駆使しての巨大なカジキや鮫たちとの格闘場面は迫力がある。老人の呟きはパートナーたる少年へであり自らへの叱咤なのか。叙述の歯切れの良さに、時にジョイス風な意識の流れ的手法の試みなのかと思える表現が加味され、大海の中での人間ドラマが一層 効果的。ライバルたるフォークナーや親交あったジョイスもだが、メルヴィルの「白鯨」を一瞬 想起しそうになったが、ちょっと野暮な臆測かな。傑作。2021/04/06

ノンケ女医長

141
老人は、たった独りで海に漁へ出かけ、とんでもない大きさの魚に遭遇する。老人が格闘した相手は、大魚と己の心身だった。勇戦は数日間に及び、衰弱する。それでも老人は体を奮起させ、一人よく敢闘する。悲鳴を上げる自分の体に向き合い、嘆き、そして称える描写がとても力強い。星空を観ながらの帰路にも、思わぬ苦闘が続いた。心魂尽き果てて、小屋に帰り着き、こんこんと眠る老人が目を覚ましたとき。老人は何を思うんだろう。とても素晴らしい読後感で、人生に疲れを感じたときに何度も読み、勇気をもらいたい。2022/11/26

buchipanda3

133
ハバナの沖合を流れるメキシコ湾流(Gulf Stream)、その広大な海流の上をたった一人で小舟に乗り、大物(カジキ)を釣り上げるべく奮闘する老人の姿が目の前に浮かんでくる。その大きなものたちと対峙する小さな存在とも言うべき彼は決して負けてないと思った。冒頭の少年とのやり取りで、あぁ老いているのだなと。そう思わせた彼が船上で見せる粘り強さ、無骨な大胆さに思わずやるなぁ爺さんと。さらに海や獲物への畏敬や親しみの念を見せる態度も感じ入る。描かれた彼は特別な人物じゃない。でもその自然体な意地に心地良さを感じた。2021/08/24

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