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内容説明
堀辰雄の傑作少年文学『羽ばたき Ein Marchen』を壮麗にコミカライズ。
二人の少年――ジジとキキをめぐる美しく残酷なおとぎ話。
“ジジは普通の餓鬼大將とちがつて、ただ誰よりも腕力が強いだけではなく、それと同じくらゐに誰よりも美しかつた。その慓悍な眼ざしと、その貝殼の脣とが、他の仲間たちの上に異常な魅力をもつてゐるのだ。ジジは彼の貧乏なことをも彼の魅力の一つにしてゐるやうな少年だ。”
“ジゴマのジジをキキといふ少年が追ひかけてゐた。キキは身體の小さなくせに、頭の大きい少年だ。そのとき、突然ジジが石につまづいて、はげしく倒れた。そして死人の眞似をした。するとキキは、彼を捕縛すべき警官の役割を放棄して、ジジの肩に手をかけながら、女の子のやうにやさしく聞いた。
――ジジ、どこも怪我をしない? ”
原作小説と鳩山郁子の描き下ろしあとがきのほかに、文筆家・長山靖生氏による堀辰雄が生きた時代と本作の作品世界を楽しく学べる解説文も収録。
『羽ばたき Ein Marchen』という名作を多角的に楽しめる一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
39
原作を未読だったため、巻末に紹介されていて助かりました。ただ、この小説をここまで読み込み、ご自身の作品としている漫画家さん、お見事です。魔女の宅急便の名前がこの二人から来ているとは知りませんでした。…ちびまる子ちゃんの花輪君と丸尾君の名前と同じ漫画家がいてびっくりした時と似た感じ、かな。2023/02/04
R子
15
堀辰雄の短篇「羽ばたき」のコミカライズ。原作も併録。鳩山郁子の画が緻密で美しく溜息...。最近鳩モチーフの作品が多いよね。凄く嵌ってる。貧困や犯罪を扱い刹那的ながらもどこか幻想的な世界に惹き込まれた。鳩の飛翔する姿は、美貌の少年ジジの憧れを投影している。ジゴマや少女に成り代わり自由を得たつもりでいたのに、自分自身から逃れることはできないと知ったときの彼の驚きと怒りが忘れがたい。オマージュとしてのラストシーンが明るくて救われる。2020/07/19
miaou_u
13
羽ばたき、とは、そういうことだったのだ、と、読後の余韻の中で、ぼうっ、と思う。ジジ、キキ、少年たち、鳩、飛翔、無声映画。堀辰雄の原作を彩る、鳩山郁子さんの、短編映画を猛スピードで駆け抜けるような、迸る筆のイメージにくらくらと圧倒される。それにしても、私は昔、中学生くらいまで、眠ったまま、真っ暗な闇の中に堕ちてゆく感覚を繰り返し夢にみて、ガバッと起き上がっていた。いつの間にか、そんな夢は見なくなった。そんな遠い日のことを思い出した。 原作、後書き、解説まで、『羽ばたき』の世界を堪能させていただきました。2020/07/11
TKK
12
堀辰雄は「風立ちぬ」のイメージしかなかったのですが、こんな作品があったことに驚き。異国情緒のモダンな香りのする、ほの暗いダークファンタジーです。この「羽ばたき」をコミカライズされたのが、以前から大ファンの鳩山郁子さん。スタイリッシュな絵柄はため息もので、原作では残酷だったラストも、ふんわりとした幸福に包まれて泣きそうになりました。このコミックスには堀辰雄の原作も併せて掲載されているので、漫画を読み原作を読み、また漫画を読み、と時を忘れるほど堪能いたしました。2020/07/13
miaou_u
9
再読。はぁ、、、堀辰雄の世界と、鳩山郁子さんの描かれる唯一無二の世界の融合、なんて残酷で美しいのでしょうか。もっと多くのかたに読まれてほしい。芸術です。2021/12/24