内容説明
戦後占領下の沖縄。大学を中退し米軍諜報機関の翻訳作業についた私は、仕事に倦んで教師へと職を変えた。赴任先は、校舎も教科書もない高校。だが、日本の影響を受けないここで、国語ではなく“文学”を教えたい。自分の創作戯曲を生徒達に演じさせようと考える。物はないが、もう戦争はないという開放感に満ち溢れた時代の少年少女と教師を描く。著者が自分の一番輝いていた時と回想する自伝的小説。
目次
序章
荒野の青春
終章
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
83
米国統治下、矛盾の溢れる世相。反米・祖国復帰の機運も高まる中、手探り/手作りで模索する戦後沖縄の教育現場。”新世界”への希望に溢れる教師・生徒と、著者が作り上げた劇と歌が、夢を齎す過程が輝いている。120点を付けた解答用紙、授業そっちのけの四方山話など、時勢故有用な”余裕”だった気がする。たった2年の教員生活だが、その後の生徒たちとの再会に滲む信頼・愛情が温かい。特に、問題児・徳郎が、本を持参した件。「文学性を削る」国の教育方針を憂う著者。同感。古典の良さ云々以前に多様性の喪失を危惧。2021/02/22
へくとぱすかる
62
94歳になった作家・大城さんの、2年間の教師時代を回想した文庫書き下ろし作品。教え子の孫の結婚式から1948年の沖縄へ飛ぶ。まともに校舎も教科書もなく、手探りの授業や家庭訪問を始める。何もなくても工夫をこらし、バスケットボールや演劇で成果を収めていくが、淡々とした筆致からは、いわゆる熱血とはちがう先生のあり方がうかんでくる。元生徒の作文、脚本、原作の引用など、回想と小説とドキュメントが渾然一体となって、沖縄戦の数年後、みんなが苦しかった時代なのに、なぜか明るさを感じさせる。奇跡という言葉がふさわしい。2020/06/07
酔拳2
24
タイトルからして、もっと戦中もしくは戦後直後の悲惨な話かと思ったが、舞台は終戦の3年後くらいの環境。でも十分に物はないし、苦労の多い時代。そんな時代に生々と生きた先生と生徒の話。作者の大城先生の自叙伝的な話だが、作家になる前のこの時代があったからこそなのかな。重要なイベントとして学芸会が出てくるが、作者が演劇を嗜んでいたからこそ、そこから生徒たちの希望を生んだのだろう。何より勉強したい子が沢山いたというのが新鮮。今は勉強はやらされる物だが、そうではない時代。飢えている者に与えると吸収力が違うんだな。2026/01/07
海燕
9
心に残る良い本だった。著者が戦後いくらもたたない頃、2年間務めた沖縄の高校での教師経験を基にした自伝的小説。全体を流れる時代感が何とも懐かしくてよいのだが、近年書き下ろされたものなので表現や視点が現代的で、古さを感じない。どのように文字にされたか承知しないが、90歳過ぎてこのような瑞々しい物語を著されたことに驚く。そして最後に、文学を排し実務書類の読み解きに比重を移していく近年の国語教育のあり方について、「漱石や鴎外に接することなく卒業していく生徒も出てくる」と憂う。文学を好む者として同感。2021/06/05
Masakazu Fujino
8
大城立裕さん94歳の遺作。戦後の沖縄で1948年から2年間、高校教師を務めた著者の自伝的小説(?)。苦しく貧しくても、幸せな日々だったのだなあ。2020/11/23




