内容説明
1945年夏、敗戦翌日。 昨日までの正義が否定され、誰もが呆然とする中、朝日新聞社に乗り込んできた男がいた。全てを失った今だからこそ、戦争で失われていた「高校野球大会」を復活させなければいけない、と言う。 「会社と自分の生き残り」という不純な動機で動いていた記者の神住は、人々の熱い想いに触れ、全国を奔走するが、そこに立ちふさがったのは、高校野球に理解を示さぬGHQの強固な拒絶だった……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
100
雰囲気は日本版『フィールド・オブ・ドリームス』的な感じかなと。映画みたくタイムリープみたいのはありませんが、戦後、高校野球を復活させるために奔走した熱き男達の静かな戦いが綴られています。高校野球シーズンかつ終戦記念日が近づいているこの時期にこれ程ドンピシャな作品はないかと思われます。高校野球と戦後モノのコラボなんて、小説としてある意味最強な組み合わせですよね。しかもそこに米軍との野球対決も加わるなんて、胸が熱くならないワケがありません。今、高校野球がこうして開催されているのは彼らのおかげで感謝しなくては。2024/08/12
となりのトウシロウ
85
昭和20年8月敗戦で焦土と化し、着る物や食べる物にも困る貧困に喘ぐ我が国で、「崩壊した価値観と自尊心の欠片を必死に集めてかろうじて立っている」状態の日本で、戦時中やむなく中断していた高校野球大会を翌年に復活させるべく立ち上がった新聞記者の姿を描いた物語。野球どころではない生きることに必死だった時代にここまで全国を駆けずり奔走するその原動力は何なのか。高校野球が国民に広く受け入れられ、愛されていて、そして何より球児達の熱い思いがあったからなんだろう。そんな歴史を振り返るのも良い。2024/11/17
五右衛門
71
読了。この時期に相応しい!野球、甲子園(今正にベスト4決め中)が題材でした。戦後すぐの復興?すらしていない中での野球、何もかもなくなってしまった中からの野球、けれども主人公の様な人物が夢と希望とを諦めずに大会開催に漕ぎつける。少し理不尽さも感じましたが突っ走る姿に脱帽でした。又奥さんも災難に会いながらも上手く尻を叩いてますがな。今大会もコロナ渦での開催ですが野球が出来る環境を有難く想いながら戦って下さいね。検討を祈ります。2022/08/18
Wan-Nyans
48
★4感動した。今年は例外として、当たり前のように夏の甲子園が開催されなかった時代。終戦後の瓦礫と焼け野原の中から復活にかけた人々の物語。GHQの統制の元、日本が愛する”野球”と本家”ベースボール”のプライドのぶつかり合い。日本式の燃え尽きる事も辞さない学生野球至上主義は果たして民主主義の教育として適切なのか?まだプロ野球が発展途上にあった時代。日米問わず関わった人々の熱い想いに野球の素晴らしさを再認識した。野球には予想を越えたドラマが常にある。シーズンが終了して寂しい季節には野球小説で慰めよう(^^)2020/12/18
菜穂子
47
戦後の夏の甲子園の復活に情熱を注いだ物語。まさに野球の歴史を紐解くように進んでいく。戦後大阪朝日新聞社の記者が進駐軍との交渉で1年後に夏の甲子園復活までのまさに血と汗と涙の物語。なぜ高校野球がこれ程人の心を虜にするのか?あの時代から脈々と流れる日本人の血。野球道を突き進む日本人、楽しむことを忘れないアメリカの野球。先日のジャパンのメンバーはついにここまでたどり着いたことを見せてくれたのだ。2023/05/18